東京弁護士会

名張毒ぶどう酒事件第8次再審請求異議審申立棄却決定に対する会長声明

2015年01月16日

東京弁護士会 会長 髙中 正彦

 2015年1月9日、名古屋高等裁判所刑事第2部(木口信之裁判長)は、いわゆる「名張毒ぶどう酒事件」(以下「本件」という。)の第8次再審請求異議審において、請求人奥西勝氏の異議申立を棄却する旨の決定(以下「本決定」という。)を行った。
 本件は、1961年3月28日、三重県名張市で、農薬が混入されたぶどう酒を飲んだ女性5人が死亡し、12人が重軽傷を負った事件である。奥西勝氏は、殺人罪、殺人未遂罪で起訴され、1964年に第一審で無罪となったものの、1969年に控訴審で逆転死刑判決を受け、1972年に最高裁で上告が棄却されて、死刑判決が確定した。奥西勝氏は、死刑判決確定後も再審請求を行って冤罪を訴え、第7次再審請求では2005年に再審開始が決定されたものの、その後取り消されるという経緯を辿った。
 奥西勝氏と弁護団は、2013年11月5日に第8次再審請求を申し立て、第7次再審請求の最終審で証拠提出した農薬に関する意見書等が最終審で検討されないまま再審請求が棄却されたことから、同意見書等をあらためて新証拠として提出した上で、さらに第7次再審請求の最終審が再審請求を棄却した根拠が誤りであることを実験により明らかにすることを通告していた。
 しかし、請求審の名古屋高等裁判所刑事第1部(石山容示裁判長)は、2014年5月28日、わずか7ヶ月の審理期間で、弁護団が提出する旨を通告していた実験結果の提出を待たずに、上記意見書等に証拠の新規性がないとの従前の判例にも反する不当な判断をして、再審請求を棄却した。本決定も、請求審と同様にわずか7ヶ月の審理期間で、実質審理を全く行わないまま請求審決定を追認したものである。しかも、裁判所は、弁護団の証拠物の閲覧・謄写請求に対し、不当にもその機会すら与えなかった。
 この間、検察官は、弁護団からの手持ち証拠の開示請求に対して応答すらせず、裁判所もその姿勢を追認してきた。布川事件、東電女性社員事件、袴田事件等、近時の著名な再審無罪事例を見るだけでも、検察官手持ち証拠中に再審請求人に有利な証拠が存在し、再審の端緒となる例が多い。本件について、検察官手持ち証拠が一切開示されないまま死刑判決が維持されていることは、著しく正義に反するといわなければならない。
 奥西勝氏は、最高裁判所に特別抗告が行われた2015年1月14日、89歳を迎えた。
 本決定は、奥西勝氏から雪冤の機会を奪ったものであり、到底容認することはできず、直ちに是正されなければならない。
 当会は、今後も奥西勝氏が無罪判決を勝ち取るまで支援することを表明する。

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