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「出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律」について

1999年09月16日

東京弁護士会 会長 飯塚 孝

 去る8月13日、衆議院本会議において、政府が今国会に上程していた「出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案」が賛成多数で可決され同法案が成立した。
改正入管法中には、本邦からの退去を強制された者に係る上陸拒否期間を「1年」から「5年」に伸長する、同法5条1項9号の改正が含まれている。この改正により、日本人の配偶者である外国人が在留期間を超過したため退去強制された場合においても、その後最低限5年にわたって日本に入国し、家族との生活を再開できないこととなる。
現行法での最低限1年間入国できないという事態ですら、家族にとっては大問題であり、当会が実施している外国人のための法律相談においても、このような長期間の離別を強いる現行法の不当を訴える相談者が多数存在している。この上陸拒否期間が5年に伸長されたことは、これらの家族の強制的離別とそれによる家族の崩壊の危険性を飛躍的に高めたものと評価さぜるを得ない。これは、家族を、社会の自然かつ基礎的な単位であり、社会および国による保護を受ける権利を有すると定めた「市民的及び政治的権利に関する国際規約」(自由権規約)第23条1項からも大きな問題をはらむものと考えられる。
今回の入管法改正案の審議に際しても、これらの点が指摘され、法案の可決に際しては、両院法務委員会で、「当該外国人の在留中に生じた家族的結合等」に特段の配慮が払われるべきである旨の付帯決議が採択されている。
当会としても、今回の入管法改正が、日本人の配偶者である外国人の家族との不当な離別および家族の崩壊をもたらすことのないよう、上陸拒否期間中の者への上陸特別許可、あるいは退去強制手続きにおける在留特別許可のより積極的な活用、など、人道的配慮に基づいた改正入管法の執行、運営がなされるよう強く希望するものである。