東京弁護士会

接見室での写真撮影に関する東京高裁判決に対する会長談話

2015年07月15日

東京弁護士会 会長 伊藤 茂昭

 去る7月9日、東京高裁第2民事部は、当会会員が、接見妨害を理由に提訴していた国賠訴訟について東京地裁民事第39部が昨年言い渡した一部認容判決を取り消し、一審原告の請求を棄却する旨の判決を下した。
 この事件は、2012年3月30日、当会会員が、東京拘置所において、弁護人として、健康状態に異常が認められる被告人と接見をしていた際に、東京拘置所の職員により、面会室内で写真撮影をしたことを理由として、その接見及び写真撮影・録画を中断させられ、強制的に被告人との接見を中止させられたというものである。
 本判決は、刑事訴訟法39条1項の「接見」には、被告人が弁護人等により写真撮影やビデオ撮影されたり、弁護人が面会時の様子や結果を音声や画像等に記録化することは本来的には含まれないと判断した。その理由は「接見」という言葉が、「面会」を意味すること、「接見」と「書類若しくは物の授受」が区別されていること、刑事訴訟法が制定された昭和23年7月10日当時、カメラやビデオ等の撮影機器は普及しておらず、弁護人等が被告人を写真撮影したり、動画撮影したりすることは想定されていなかったという条文の文言に基づく形式的なものであり、「接見」の内実に触れようとすらしていない。
 また、メモのような情報の記録化のための行為であれば、接見交通権の保障の範囲内として認められるべきものもあるとしつつ、「記録化の目的及び必要性、その態様の相当性、立会人なくして行えることからくる危険性等の諸事情を考慮して検討されるべきもの」とし、情報の記録化に対してすら広汎な制約が及ぶとしたのである。しかも、証拠保全の目的がある場合には、刑事訴訟法179条の証拠保全の申立てをすれば足り、そのような場合の写真撮影等は認められないと現実の実務を全く理解していない判断をしているのである。このように本判決は、写真撮影等が接見交通権で保障されないということを前提に刑事収容施設法117条、113条に定める「刑事施設の規律及び秩序を害する行為」があれば、逃亡のおそれ等が認められなくとも、その行為の制止、面会の一時停止、面会の終了の措置を執ることができる旨判示し、拘置所の庁舎管理権に基づき弁護人の接見に対して広汎な制約が及ぶことを認めた。
 そもそも、接見交通権は、憲法34条が保障する被疑者・被告人の弁護人の援助を受ける権利の中核ともいうべき刑事手続上最も重要な権利である。本判決は、国家権力が庁舎管理権に基づき施設内の規律と秩序を守るという名目で接見交通権を侵害することを認めるに等しい判決であって、接見交通権の理解を全く欠いており、著しく不当である。
 本判決により、刑事弁護を担う弁護士が、弁護の一環として、接見の様子を記録化し、あるいは被疑者・被告人の心身の状態を証拠化するために、接見室内で写真撮影等を行うことを躊躇し、十全な弁護活動に支障を来たすようなことがあってはならない。
 当会は、弁護人が被疑者・被告人との接見の際に、弁護活動上必要がある場合に、写真撮影・録画を行うことは、接見交通権として保障されるべき行為であることをあらためて表明し、関係各機関に対し弁護人と被疑者・被告人との間の自由な接見交通を保障することを強く求める。

以上

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