東京弁護士会

沖縄県知事による公有水面埋立承認の取消しに関する会長声明

2015年10月19日

東京弁護士会 会長 伊藤 茂昭

1 翁長雄志沖縄県知事は、2015年10月13日、公有水面埋立法(大正10年法律第57号)第42条第3項に準用される同法第4条第1項に基づき、2013年12月27日付けで沖縄防衛局が受けた普天間代替施設建設事業に係る公有水面埋立承認(以下「本件承認」という。)を取り消し、沖縄防衛局に対して通知した。

2 本件承認の取消処分の理由は、①普天間飛行場代替施設を沖縄県内に建設せねばならないこと及び県内では辺野古に建設せねばならないことについての実質的な根拠が乏しく、「埋立ての必要性」を認めることができないこと、②埋立対象地は、自然環境的観点から極めて貴重な価値を有する地域であって、埋立てが実施されると現況の自然への回復がほぼ不可能となり、埋立対象地に普天間飛行場代替施設が建設された場合、新たに騒音被害の増大が住民の生活や健康に大きな被害を与える可能性があること、③全国の在日米軍専用施設の73.8%を抱える沖縄県において、米軍基地の固定化を招く契機となり、基地負担についての格差や過重負担の固定化に繋がることから、公有水面埋立法第4条第1項第1号の要件を充足していないこと、並びに、環境保全措置は問題の現況及び影響を的確に把握したとは言い難く、これに対する措置が適正に講じられているとも言い難いこと、その程度が十分とも認め難いことから、同条同項第2号の要件も充足していないというものである。
 本件承認の取消処分は、2015年7月16日付けで「普天間代替施設建設事業に係る公有水面埋立承認手続に関する第三者委員会」が行った、本件承認手続には「法律的瑕疵がある」旨の検証結果報告を踏まえたものである。

3 これに対し、沖縄防衛局は、同年10月14日、国土交通大臣に対し、本件承認の取消処分は違法であることなどから、地方自治法(昭和22年法律第67号)第255条の2に基づき、行政不服審査法(昭和37年法律第160号)により当該取消処分を取り消す裁決を求める審査請求、及びそれに対する裁決があるまで取消処分の効力を停止するとの決定を求める執行停止の申立てを行った。しかし、行政不服審査法は、「行政庁の違法又は不当な処分その他公権力の行使に当たる行為に関し、国民に対して広く行政庁に対する不服申立てのみちを開くことによって、簡易迅速な手続による国民の権利利益の救済を図るとともに、行政の適正な運営を確保することを目的とする」ものである(同法第1条)。本件承認取消処分にかかる紛争は、国と普通地方公共団体の関係いわば行政機関相互の関係にかかわる問題であるところ、地方自治法は、国と地方公共団体が対等・協力の関係にあることを前提とし、その紛争解決の手続について、国の関与の制度を設け、大臣による是正指示(地方自治法第245条の7)、国地方係争処理委員会による審査(同法第250条の13)、国の関与に関する訴えの提起(同法第251条の5)、都道府県の不作為に関する国の訴えの提起(同法第251条の7)等を定めている。そうすると、本件承認取消処分にかかる紛争について、国の機関が、「一般私人と同様の立場」で「審査請求をする資格を当然に有する」などとして行政不服審査法による手続を進めることは、上記の行政不服審査法の目的を逸脱するうえ、事実上、国土交通大臣の判断をもって沖縄県知事の判断に代えるもので、地方自治法が定める手続を回避する不服申立と言わざるを得ず、地方自治の本旨に悖るものであるから、慎重であるべきである。

4 日本弁護士連合会の、2013年11月21日、「普天間飛行場代替施設建設事業に基づく公有水面埋立てに関する意見書」、及び2015年10月13日、「普天間飛行場代替施設建設事業に係る公有水面埋立ての承認の取消しに関する会長声明」からも、本件承認には、法律的な瑕疵が存在し、瑕疵の程度も重大であり、沖縄県知事による本件承認の取消しは、法的に許容されることを指摘している。
 また、当会は、1997年以来、毎年、沖縄米軍基地にかかわる被害・人権侵害等の状況について訪問調査を重ね、辺野古の現地視察や宜野湾市、名護市等からの聞き取りを行い、あるいは沖縄米軍基地をめぐる問題に関するシンポジウムを開催するなど、国による普天間飛行場代替施設建設事業が実施された場合の自然環境や住民の生活への影響、過剰な基地負担の固定化による被害等について調査研究を重ねてきた。
 こうしたこれまでの経緯を踏まえたうえで、本件承認手続についての検証結果、自然環境の保全、住民の生活への影響、そして沖縄県民の意思などに鑑みれば、本件承認の取消しという沖縄県知事の判断には十分な理由がある。
 よって、当会は、国に対し、かかる沖縄県知事の判断を尊重し、工事の続行をしないことを求めるものである。

以上

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