東京弁護士会

死刑執行に抗議する会長声明

2016年11月11日

東京弁護士会 会長 小林 元治

 本日、金田勝年法務大臣は、男性1名の死刑が福岡拘置所において執行されたことを発表した。この死刑執行は、今年3月25日に2名の死刑執行がなされて以来、約8ヶ月ぶりのことであり、同法務大臣が就任してから初めてのことである。また、第2次安倍内閣が成立した時(2012年12月26日)以降で数えると10回目で、合計17人が執行されたことになる。
 日本弁護士連合会では、本年10月7日に第59回人権擁護大会において、「日本において国連犯罪防止刑事司法会議が開催される2020年までに死刑制度の廃止を目指すべきであること。死刑を廃止するに際して死刑が科されてきたような凶悪犯罪に対する代替刑を検討すること」等を内容とする宣言案を採択したが、本執行はこうした流れに配慮しないものであると言わざるを得ない。
 死刑は、人間の尊い生命を奪う不可逆的な刑罰であり、誤判の場合には取り返しのつかない刑罰であるという問題点を内包している。
 現に日本では、死刑を宣告されながら、後に無罪であることが判明した著名な死刑再審4事件が過去に存在した外、近年に至っても2014年3月、静岡地方裁判所は袴田巖氏の第二次再審請求事件について、再審を開始し、死刑及び拘置の執行を停止する決定をしている。現在、東京高等裁判所において即時抗告審が行われているが、もし死刑が執行されていたならば、まさに取り返しのつかない事態となっていたのである。こうした事件は、刑事裁判における冤罪の危険性と死刑の執行による取り返しのつかない人権侵害の恐ろしさを如実に示すものであり、一方で、死刑存置論も根強く存在するものの、多面的な観点から徐々に死刑廃止に向けて国民の理解も進みつつある。
 さらに、日本では殺人事件、強盗殺人事件等重大事件が1年間に1000件程度と顕著に減少しており、先進国の中でも最も安全な国の一つと評価されている。
 こうした状況を受け、国際人権(自由権)規約委員会は、2014年、日本政府に対し、死刑の廃止について十分に考慮すること等を勧告している。
 この度の死刑執行が、世界及び日本の情勢を踏まえ、かつ国民の死刑廃止に対する理解の進行を熟考の上でなされたものであったのか、あらためて問われなければならない。
 当会は、今回の死刑執行に対し強く抗議し、あわせて法務大臣に対し、死刑制度の廃止についての多方面からの検討の開始と死刑執行の停止に向けて誠実な対応をするよう、重ねて求めるものである。

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