東京弁護士会

スリランカへの集団強制送還に対する会長声明

2016年11月18日

東京弁護士会 会長 小林 元治

 2016年9月22日、国はスリランカ国籍の30名をチャーター機によって本国に強制送還した。
 法務省によると、今回送還された30名のうち、25名が難民認定申請をした者であり、そのうち22名が難民不認定処分に対する異議申立の却下または棄却の告知をされてから24時間以内に送還されたということである。難民不認定処分に対する異議申立を却下または棄却された者は、告知から6ヶ月以内に難民不認定処分取消訴訟を提起することができるが、今回送還された者は日本において裁判を受ける権利を奪われたことになる。すなわち今回の強制送還は、憲法第32条の保障する裁判を受ける権利を侵害するものであった。
 そして、送還された者は取消訴訟による司法審査を受けていないのであるから、今回の強制送還は難民として認定されるべき者を送還してしまった可能性も否定できない。難民条約第33条1項は、「難民を、いかなる方法によっても、人種、宗教、国籍若しくは特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見のためにその生命又は自由が脅威にさらされるおそれのある領域の国境へ追放し又は送還してはならない」というノン・ルフールマンの原則を定めているが、今回の送還は、司法審査を未だ受けておらず、本国で迫害を受けるおそれのある者を送還したものであり、まさに同原則に反する送還であった疑いがある。
 庇護申請者に対する手続保障、特に否定的な決定をされた者に対する強制送還の停止を含む手続保障については、2014年8月に行われた日本の第6回定期報告における国連自由権規約委員会の最終見解においても勧告されたとおりである。それにもかかわらず今回の送還が行われたことは、国際的な人権保障システムに参加する当事国として非難を免れない。
 強制送還に当たっては、訴訟活動等に関する判断に資するよう、弁護士が民事事件等の代理人となっている場合で、身元保証人となるなど一定の条件を満たす場合には、送還予定時期についてその概ね2か月前に通知希望申出書を提出した弁護士に通知することが2010年9月9日に日本弁護士連合会と法務省間で合意されている。今回、送還されたのはこれに該当しない者であるが、代理人弁護士がいない場合であっても裁判を受ける権利を等しく有することに変わりはなく、むしろ異議申立が却下ないし棄却されたことをもって弁護士に訴訟提起を依頼することも十分ありうる。このように、今回、22名を難民不認定処分に対する異議申立の却下または棄却の告知をしてから24時間以内に送還したことは、日本弁護士連合会と法務省間の合意の趣旨にも反するものであった。
 また、強制送還は裁判を受ける権利の行使を不可能にするのみならず、人身の自由や移転の自由を含む重要な人権を制約する行為である。したがって、裁判を受ける権利に加えて、医療アクセスを含む健康管理、或いは強制送還された場合の帰住先の確保等の重要性に鑑みれば、代理人弁護士の有無にかかわらず、全ての被退去強制者に対して送還時期の告知を行うべきである。
 当会は、国に対し、今回の集団強制送還は以上の問題点を含むことを指摘すると共に、今後の退去強制手続において、難民認定申請者の裁判を受ける権利を含む被退去強制者の人権を十分に保障することを求めるものである。

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