東京弁護士会

南スーダンにおける国連平和維持活動(PKO)のために派遣する自衛隊に対し「駆けつけ警護」の新任務と武器使用権限を付与する閣議決定に抗議し、その撤回と安保法制の廃止を求める会長声明

2016年11月18日

東京弁護士会 会長 小林 元治

1 政府は、本年11月15日、同月20日から南スーダンへ派遣する自衛隊PKO第11次隊に改正「国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律」(改正PKO法)に基づく「駆けつけ警護」の新任務と任務遂行のための武器使用権限を付与する閣議決定を行った。改正PKO法は、2015年9月に強行的に採決され、本年3月に施行された平和安全法制整備法及び国際平和支援法(安保法制)に含まれるものである。昨年9月の同法成立後、海外での自衛隊の任務が拡大される初のケースとなる。
2 これまで当会は、従来は禁止されてきた「駆けつけ警護」の任務を自衛隊に新たに付与すること及びその任務を遂行するための武器使用を認めることは、自己防衛の限度を超えるものであり、自衛隊員をより危険な現場にさらし、さらには戦闘行為から「武力の行使」に至る危険性があるものであるから、憲法第9条に明らかに違反すること、また、これまで政府が永年にわたり確認してきた憲法解釈に反する安保法制は、その成立過程において立憲主義に反すること、さらに、国民の反対の声を無視した強引な法律の制定は民主主義の理念にも反することを繰り返し指摘し、安保法制の成立に反対するとともに、成立後はその廃止を強く求めてきた。
 今回の閣議決定は、かかる憲法違反の法律に基づいて南スーダンへのPKO派遣部隊に「駆けつけ警護」の新任務を付与し、任務遂行のための武器使用を認めるものであり、それによって現実に憲法の恒久平和主義、立憲主義に違反することになるので、到底許されるものではない。
3 南スーダンでは本年7月に、首都ジュバで政府軍と反政府軍が武力衝突して大規模な戦闘が発生し、数百人が死亡した。その際、国内避難民が暮らす国連南スーダン派遣団(UNMISS)の関連施設も襲撃され、少なくとも73人が犠牲になり、中国のPKO隊員2名も死亡した。本年11月1日に発表された国連の現地調査に基づく報告書によれば、この政府軍と反政府軍との大規模な戦闘の際、市民に対する殺人、略奪、性的暴力等の甚大な人権侵害を行ったのは政府軍兵士だとされている。この中に自衛隊が「駆けつけ警護」に入り、政府軍兵士を相手に武器を使用すれば、容易に政府軍との戦闘となりうる。実際、南スーダンのマイケル・マクエイ・ルエス情報相によれば、この大規模な戦闘の際、政府軍とUNMISSのPKO部隊との間で一時交戦があったとされている。
 政府軍であれ、反政府軍であれ、これらは「国家または国家に準じる組織」と言え、これらの組織との間で新任務の遂行のために武器を使用することは、政府見解によっても憲法第9条が禁止する「国際紛争を解決する手段として」の「武力の行使」にあたる。また、それによって、戦後初めて自衛隊員が海外で戦闘行為によって犠牲になり、自衛隊員が現地の民間人等を殺害するリスクも極めて高くなる。
4 また、上記国連の報告書は、政府軍と反政府軍の間でなされた2015年8月の和平合意は、本年7月に首都ジュバで発生した大規模な戦闘で崩壊したと述べている。
 こうした状況からすれば、PKO参加5原則のうち少なくとも紛争当事者間の停戦合意は崩壊していると言わざるを得ず、本来なら政府は現在派遣している自衛隊を即時撤退させ、新たな派遣は見送らなければならない。ところが、今回の閣議決定は、PKO参加の要件を明らかに欠いている中で派遣される自衛隊に上記憲法違反の新任務を付与するものであり、尚のこと許されない。
5 よって当会は、南スーダンに派遣する自衛隊に対して「駆けつけ警護」の新任務を付与し、任務遂行のための武器使用を認める今回の閣議決定に抗議し、その撤回を求めるとともに、改めて改正PKO法を含む安保法制の速やかな廃止を求めるものである。

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