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政府が自衛隊法第95条の2の運用に関する指針を決定したことに抗議し、その撤回と安保法制の廃止を求める会長声明

2017年02月01日

東京弁護士会 会長 小林 元治

1 政府は、昨年12月22日、自衛隊法第95条の2につき、自衛隊と連携して我が国の防衛に資する活動に現に従事しているアメリカ合衆国の軍隊その他の外国の軍隊、その他これに類する組織(以下「合衆国軍隊等」という。)の部隊の武器等という、我が国の防衛力を構成する重要な物的手段に相当するものと評価することができるものを武力攻撃に至らない侵害から防護するための武器の使用を認めることを趣旨とする運用指針(以下「運用指針」という。)を決定した。
 自衛隊法第95条の2は、「平和安全法制整備法及び国際平和支援法」(安保法制)に含まれるものであり、運用指針の決定によって、自衛隊が合衆国軍隊等の艦船を守るなど、安保法制に基づく自衛隊の海外での任務拡大が本格化することになる。

2 これまで当会は、自衛隊法第95条の2は実質上集団的自衛権の行使に発展する危険を孕むものであり、これを含む安保法制が憲法第9条に反すること、また、これまで政府が永年にわたって確認してきた憲法解釈を閣議及び法律によって変更することは立憲主義に反すること、さらに、国民の反対の声を無視した強引な安保法制の制定は民主主義の理念にも反することを繰り返し指摘し、安保法制の成立に反対するとともに成立後はその廃止を強く求めてきた。

3 運用指針は、「自衛隊法第95条の2第1項において『現に戦闘行為が行われている現場で行われるものを除く』と規定することにより、同項の警護が合衆国軍隊等による『武力の行使と一体化』しないことを担保するとともに、同条の規定による武器の使用によって戦闘行為に対処することはないものとし、したがって、自衛隊が武力の行使に及ぶことがなく、また、同条の規定による武器の使用を契機として戦闘行為に発展することもないようにしている。このような武器の使用は、憲法第9条で禁止された『武力の行使』には当たらない」としている。
 しかし、合衆国軍隊等の船舶・航空機を含む武器等の防護の必要のある現場が「現に戦闘行為が行われている現場」ではないとは到底想定できないのみならず、仮に現に戦闘行為が行われていなくても、戦闘行為に発展する危険のある現場(いわゆるグレーゾーン)における武器使用は、それによって容易に戦闘行為に発展する危険を有している。そして、その場合の自衛隊の武器等防護の活動は、合衆国軍隊等の武力行使と一体化して「武力の行使」に発展する危険を免れない。

4 また、運用指針は、自衛隊法第95条の2の「我が国の防衛に資する活動」に当たり得る活動の例として、ア 弾道ミサイルの警戒を含む情報収集・警戒監視活動、イ 我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態に際して行われる輸送、補給等の活動、ウ 我が国を防衛するために必要な能力を向上させるための共同訓練、の3つを挙げている。しかし、これらの活動は、あくまでも例示列挙であるうえ、その文言も曖昧であるから、その範囲が限定されているとは言えない。したがって、「防衛に資する活動」に伴う武器の使用は、運用指針の言及にもかかわらず、「極めて受動的かつ限定的」でもなければ「必要最小限」のものでもない。

5 よって、当会は、政府が自衛隊法第95条の2の運用に関する指針を決定したことは、自衛隊の憲法第9条違反の行為を現実に招くものであるから、これに抗議し、その撤回を求めるとともに、改めて自衛隊法第95条の2を含む安保法制の廃止を求めるものである。

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