東京弁護士会

共謀罪の創設を含む組織的犯罪処罰法の改正案の衆議院での採決に抗議し、その廃案を求める会長声明

2017年06月01日

東京弁護士会 会長 渕上 玲子

1 2017年5月23日、共謀罪の創設を含む組織的犯罪処罰法の改正案(以下「共謀罪法案」という。)が衆議院において可決された。
 当会は、上記採決に抗議し、共謀罪法案の廃止を求めるものである。
2 当会は、本年1月11日、共謀罪法案の国会上程に反対する会長声明において、共謀罪法案が、犯罪遂行の合意そのものを処罰し、法益侵害の具体的危険性が存在しない段階の「合意」だけで犯罪が成立するというものであり、「行為」を対象とし、原則として結果犯を処罰するという我が国の刑事法の基本原則や法体系を根底から覆すものであり、人権保障機能を危うくするものであること、その成立要件が極めて曖昧なため捜査機関の恣意的な解釈・運用によって特定の団体やその構成員を強制捜査の対象とすることも可能になるなど、結社の自由、表現の自由、さらに内心の自由をも侵害するおそれがあることを指摘した。
3 政府は、本法案について、「オリンピックやパラリンピックをテロの危険から守る」として「テロ等準備罪」との略称を用いているが、同時に「国際組織犯罪防止条約」を批准するための法改正であるとも説明する。しかし同条約は、マフィア等の組織犯罪による国際的なマネーロンダリングの防止を目的とする条約であり、テロ防止を目的とするものではないし、実際の法案の内容も、テロを防止するものではなく、広く実行行為以前の共謀や準備行為を処罰の対象とするものであるため、実態はこれまで3度廃案になった共謀罪にほかならず、法案の略称や政府の説明は、市民を誤導するものといわざるをえない。
 さらに、同条約の立法ガイドによると、それぞれの国内の事情に合わせて批准すればよく、すでに予備陰謀罪の規定や資金洗浄に関する法規制がある我が国においては、条約批准のために広範に予備・陰謀罪を認める新たな共謀罪を制定する必要性を裏付ける立法事実は存在しないというべきである。
4 とりわけ、本法案の曖昧な規定は、構成要件の明確性の原則に反するものであり、市民の予測可能性を損ない、健全な活動を萎縮させ、民主政の基盤を揺るがすものといわざるをえない。
 また、法益侵害の具体的危険性が存在しない段階の「合意」だけで犯罪が成立することにより、日常的な生活にまで内偵が及ぶおそれがあることについては、これまで廃案としてきた過去の状況と変わりはないのであり、むしろ対象が拡大された改正通信傍受法などの運用とも相まって、より深刻な監視社会化を招き、プライバシー侵害の恐れが一層強まると言うべきである。
5 当会は、結社の自由、表現の自由、さらに内心の自由をも侵害するおそれが強い共謀罪法案の衆議院における採決に抗議し、市民に対してその危険性を訴え、ともにその廃案を求めるために全力を尽くすことをあらためて表明する。

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