東京弁護士会

民法の成年年齢引下げ法案成立に対する会長声明

2018年06月25日

東京弁護士会 会長 安井 規雄

本年6月13日、第196回国会(今通常国会)において、民法の成年年齢を20歳から18歳に引き下げること等を内容とする「民法の一部を改正する法律」が可決成立した。
当会は、今まで、民法の成年年齢は18歳に引き下げるべきではなく、仮に引き下げる場合も消費者保護や若年者保護のための諸条件の整備の実施・検証が必要であるという意見を発出してきた(2009年7月30日付「『民法の成年年齢の引き下げについて』に関する意見書」、2017年2月13日付「消費者被害の観点からの民法の成年年齢引下げの議論に関する意見書」)。今般の法改正は、それらの条件整備がなされない中で成年年齢を18歳に引き下げるものであり、極めて遺憾である。
成年年齢を引き下げる理由として、急速な少子高齢化の中で若年者の社会への参加時期を早めることにより「大人」の自覚を高めることが社会に大きな活力をもたらすという点や18歳・19歳の若者の自己決定権の尊重などが挙げられているが、140年間も安定的に定着してきた成年年齢20歳を引き下げる立法事実としては極めて観念的・抽象的と言わざるを得ない。一方、引下げによって、18歳・19歳の若者が未成年者取消権(民法第5条第2項)を失うことによる消費者被害拡大のおそれ、親権の対象となる年齢引下げによる自立困難な若年者の困窮の増大、高校教育での生徒指導の困難化、養育費支払終期の繰上げのおそれなど、多くの具体的な問題点が指摘されているが、その対策は現時点において全く不十分である。
今般の法改正は、2009年10月の法制審議会の意見が18歳への引下げ適当と答申したことを一つの論拠とするが、同法制審議会の最終報告書は、引下げの条件として、①若年者の自立を促すような施策・消費者被害の拡大のおそれを解決する施策が実現されること、②施策の効果が十分に発揮されること、③施策の効果が国民の意識として現れることという3つのハードルを明記している。しかし、今通常国会で意見を述べたほとんどの参考人が、現状ではこれらのハードルがクリアされていないことを指摘しており、未だ引き下げるべき時期に至っていないことが明らかである。
特に、若年者の消費者被害拡大のおそれについては、18歳・19歳の者が未成年者取消権を失うことについての対応が必要不可欠であり、つけ込み型不当勧誘についての消費者契約法の取消権などの消費者保護民事ルール創設、若年者のクレジットや借入に対する規制強化、消費者教育の充実・強化に向けての抜本的改革など具体的施策が必要であるが実現されていない。今通常国会で成立した消費者契約法改正法により、不安を煽ったり恋愛感情を抱いていることに乗じた勧誘を理由とする取消権が創設されたが、極めて限定された形態の消費者被害に関する規定に過ぎず、未成年者取消権喪失の手当としてはあまりにも不十分である。
また、引下げについての正しい知識を前提とした国民的議論も見られず、世論調査においても反対が多数を占める現状にあり、国民の意識への浸透には程遠い状況にある。
当会は、このような状況において本法律が成立したことにより、上記の問題点が現実化することへの強い懸念を改めて表明するとともに、2022年4月の本法律の施行時期までに問題点を実質的に解決する実効性ある十分な施策の実現と効果の発揮、および国民への十分な周知を図るよう政府に対して強く求めるものである。

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