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こどもの日にあたっての会長談話

2019年05月05日

東京弁護士会 会長 篠塚 力

今日は「こどもの日」です。
おそらく、多くのご家庭で、ご自身のお子さんの成長を喜び、お祝いの食卓を囲んでおられることでしょう。しかし、私たちの社会には、自分の親と今日の日を迎えることができない子どもが少なからずいることにも思いを馳せたいと思います。そして、私たちが、血縁上の親子関係や法律上の親子関係にこだわるのではなく、社会全体で子どもの成長発達を担うという意識を持ちたいと思います。

この1年ほどの間に、虐待により命を落とした子どもたちの痛ましい事件が相次いで報道され、社会の関心を呼びました。
それを受けて、児童福祉法や児童虐待防止法の改正の必要性が議論され、今国会で、親による体罰を禁止することが明記されようとしています。親が子どもに暴力を振るう際、「しつけ」であると強弁する者が少なくないことからすれば、体罰の禁止を法律上に明記することは重要な意味を持つと言えます。
もっとも、民法には、親権者に懲戒権を認める規定が残ったままであり、この規定を根拠に体罰を懲戒権行使と強弁する余地を残しています。かねてよりその削除の必要性が言われているところであり、早急な対応が望まれます。

今年は、国連で子どもの権利条約が採択されて30年(我が国が批准してから25年)の節目です。子どもの権利条約は、我が国の法制度においても、子どもを「保護の客体」ではなく「権利の主体」として見るべきという、「子ども観」に大きな転換を求めるものでした。
しかし、いまだに我が国の多くの法制度は、子どもの権利保障が実現しているとは言い難いものに留まっています。子どもの成長発達権を保障し、あらゆる場面において子どもの意見表明権を保障する法制度への転換が必要です。

東京弁護士会は、子どもの権利条約批准に先立ち、「子どもの人権110番」という無料の電話相談と面接相談を実施し、子ども自身からも多くの相談を受けて、子どもの権利救済を図ってきました。
今後は、子ども自身が、弁護士に対して公費で、自分の代理人としての活動を依頼できる「子どもの代理人」制度の実現に向けて、取り組んでいきたいと思います。また、児童相談所への弁護士常駐やスクールロイヤーの配置並びにそれらの弁護士への弁護士会としての支援体制の整備など、社会の弁護士に対する期待が高まっていることを踏まえ、東京弁護士会としても、社会の期待に応える取り組みを力強く進めていきたいと思います。

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