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人間の尊厳を踏みにじる外国人長期収容と違法な再収容に抗議する会長声明

2019年07月31日

東京弁護士会 会長 篠塚 力

現在、全国の出入国在留管理庁の収容施設で被収容者らのハンガーストライキが相次いでいる。被収容者らは、終わりの見えない長期収容に対し、命を賭して抗議するしかないところまで追い詰められているのである。
実際、ハンガーストライキをしている被収容者らは、体重が激減するなど生命身体への悪影響が深刻である。本年6月24日、大村入国管理センター(長崎県大村市)で、収容中の40代のナイジェリア国籍の男性が死亡する事件が起きたが、ハンガーストライキ後に拒食症と見られる症状で死亡したという報道もある。
当会は、上記死亡事件を受けて本年7月1日、不必要な収容を直ちにやめるよう会長声明を発したばかりであるが、事態は一向に改善していない。
その後、本年7月9日、東日本入国管理センター(茨城県牛久市)でハンガーストライキをしていた2名が仮放免を許可されたが、両名が2週間後の7月22日に、移管先の東京出入国在留管理局(以下「東京入管」という。)からの呼び出しに応じて出頭したところ、東京入管は通常なら認められるはずの仮放免延長を認めず、この2名を再収容してしまった。
この仮放免延長不許可は、ハンガーストライキまでして抗議する被収容者らに対し、たとえ仮放免が許可されてもわずか2週間で再収容されることを見せしめ的に示したものと言え、あまりに非人間的な仕打ちである。
退去強制令書による収容は、あくまでも強制送還の準備のためだけに認められるものである。刑罰でも、保安処分でも、ましてや見せしめのためのものでもない。送還の予定が立っていない外国人や、送還が法律上禁止されている難民申請者を収容することは、本来の目的外の収容であり、違法である。
こうした現在の入管行政は、当会の本年3月5日付け「出入国管理及び難民認定法の収容に関連する規定の改正を求める意見書」で述べたとおり、憲法上疑問があるとの指摘もあり(※1)、国連からたびたび改善を求められている状況にあるのであって(※2)、国際的に見ても放置は許されない。
外国人の人身の自由や人としての尊厳が蔑ろにされている事態を、我々は決して座視することができない。
当会は、今回の上記再収容に対し厳重に抗議するとともに、出入国在留管理庁が外国人の収容に係る運用を抜本的に改善し、人間の尊厳を踏みにじる収容を直ちにやめることを、改めて強く求めるものである。

(※1)野中俊彦他「憲法Ⅰ(第5版)」(平成24年、有斐閣)421頁
(※2)2007年8月7日の拷問等禁止委員会における第1回政府報告書審査、2014年8月20日の自由権規約委員会における第6回政府報告書審査、2014年9月26日の人種差別撤廃委員会における第7・8・9回政府報告書審査、2018年8月30日の人種差別撤廃委員会における第10・11回政府報告書審査、等

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