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繰り返される死刑執行に強く抗議し、死刑執行の停止を求める会長声明

2019年08月02日

東京弁護士会 会長 篠塚 力

本日、死刑確定者2名の死刑が執行された。
我が国での死刑執行は、今世紀に入ってからも、2011年を除いて毎年行われており、2001年以降これまで合計90人もの死刑囚が、国家刑罰権の発動としての死刑執行により生命を奪われていることになる。

死刑の存廃については、国民の中でも様々な議論があるところではあるが、死刑の廃止または執行停止は、すでに国際的潮流である。2018年12月までに世界142か国が、法律上または事実上、死刑を廃止しており、いまだに死刑を存置している国は54か国、執行している国は20か国に過ぎない。しかも、存置国に数えられるアメリカ合衆国でも、すでに20州で死刑が廃止されており、先進国グループであるOECD加盟国の中で死刑制度を存置し、国家として統一して執行しているのは日本だけである。

我が国は、国連の国際人権(自由権)規約委員会(1993年、1998年、2008年、2014年)、拷問禁止委員会(2007年、2013年)及び人権理事会(2008年、2012年)から、繰り返し、死刑執行を停止し、死刑廃止を前向きに検討すべきであるとの勧告を受けている。
来年には、我が国は、世界の刑事司法改革について議論される国連犯罪防止刑事司法会議とオリンピック・パラリンピック東京大会を開催することになっており、我が国が国際社会で名誉ある地位を占めるためには、国際社会の動きと国連からの勧告に真剣に向き合うべきである。

死刑は人間の尊い生命を奪う不可逆的な刑罰であるところ、「国家が人の生命を奪うことが許されるのか」という根源的な問題を内包している。しかも、死刑が執行されてから、冤罪であったことや心神喪失等の責任阻却事由が判明しても、取り返しがつかない。

もとより、被害者・遺族の多くが、加害者に極刑を望む心情を持つことは否定すべくもない。しかし、国家としての刑罰権の在り方は、被害者・遺族の心情だけから導かれるものではない。
被害者・遺族の権利回復のために、精神的なケアや経済的支援を含む十分な支援制度を整備することは、国家の責務である。また我々も、被害者・遺族の権利回復のために、弁護士会として一層力を注ぐことはもちろんである。

一方で、2020年の国連犯罪防止刑事司法会議までに、当会は会内において、被害者・遺族の心情等に配慮しつつ、改めて死刑廃止へ向けて議論を深化させる決意である。

我が国社会において、死刑の廃止とそれに代わる代替刑の在り方について十分な議論を尽くす間、当面、死刑の執行を停止する必要がある。
当会は、これまでも死刑執行の停止を求める会長声明ないし会長談話を発出してきたが、国において死刑制度の存廃について真剣な議論をすることもなく、政府が国際世論を無視して死刑執行を繰り返す態度に対し、当会は改めて、強く抗議する。

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