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74回目の原爆忌にあたっての会長談話

2019年08月06日

東京弁護士会 会長 篠塚 力

74年前の8月6日、広島に世界で初めて原子爆弾が投下されました。そして、8月9日には二つ目の原子爆弾が長崎に投下され、我が国は戦争による被爆を経験した唯一の国になりました。
真夏の太陽が市街を照らす中、「今日もこれから暑くなりそうだね」と語り合っていた人々が、一個の原子爆弾で一瞬にして命を失い、あるいは重度の火傷を負って「水をくれ!」と呻きながら亡くなりました。また多くの被爆者が家族を失い、後遺症に苦しみ、人生を一変させることになりました。しかも、原爆症に対する偏見のため、何ら落ち度のない被爆者が被爆の事実を隠しながら生きることになりました。
被爆地以外にいると原爆忌のことを忘れがちですが、あの日、我が国で現実に起きた地獄絵を、決して遠い日の他人事にしてはならないと思います。
しかし、被爆者の方々はもとより被爆二世の方々も、ご高齢の方が増えてきました。「語り部」と言われる方々から被爆の様子を知ることができる時間も、あまり長くは残されていません。記憶の風化を恐れます。
世界で、核兵器の脅威は今なお続いています。また、核兵器は使用されずとも、破壊力のある爆弾により市民、とりわけ子どもたちが犠牲になる映像に心を痛めぬ日はありません。
これまで日本弁護士連合会や当会は、繰り返し核兵器の廃絶を訴えてきました。(※1)(※2)(※3)(※4)
ようやく2017年に、核兵器禁止条約が世界122の国と地域の賛成により採択されましたが、我が国は棄権し、いまだに条約に参加していません。唯一の戦争被爆国である我が国が核兵器禁止条約に賛成しないことは、被爆者たちを大いに失望させました。私たちも失望し、怒りを禁じえません。
これからの時代においては、核の傘に頼ることなく、日本を含め各国の外交的努力により、紛争の平和的解決がなされることを願ってやみません。
私たちも「ノーモア・ヒロシマ」「ノーモア・ナガサキ」の叫びを胸に、永久に戦争を放棄することを定めた憲法9条を護り、核兵器の脅威を感じる必要がない社会を作るよう努力していきたいと思います。

(※1)1978年5月27日、日本弁護士連合会第29回定期総会における「核兵器の完全禁止に関する決議」
(※2)2017年7月10日、日本弁護士連合会「『核兵器禁止条約』の採択に関する会長声明」
(※3)2010年3月31日、東京弁護士会「核兵器廃絶を求める会長声明」
(※4)2016年5月23日、東京弁護士会「オバマ大統領の広島訪問に関する会長談話~核なき世界の実現を目指して~」

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