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躊躇なく繰り返される死刑執行に強く抗議し、死刑執行の停止を求める会長声明

2019年12月26日

東京弁護士会 会長 篠塚 力

年の瀬も押し迫った本日、森まさこ法務大臣の命令の下、福岡拘置所で死刑確定者1名の死刑が執行された。
死刑制度の存廃について国民的な議論を経ることなく、昨年同様にあたかも年末の行事であるかのように躊躇なく死刑が執行されたことに対し、戦慄とともに、強い怒りを禁じ得ない。

我が国の死刑執行方法は、当日の朝にいきなり執行を告げられ、近親者や弁護士と最期の別れをする機会もないままに、絞首の方法で執行されるものであって、かつて死刑を執行していた他国と比較しても、非人道的だというそしりを免れない。死刑執行の実態を広く情報公開した上で、国家が人の命を奪う死刑制度が現代国家において正しい刑罰の在り方なのか、改めて議論をすべきである。

これまでの会長声明でも繰り返し述べているとおり、死刑の廃止または執行停止はすでに国際的潮流である。世界の3分の2を超える国が死刑を廃止または停止しており、先進国グループであるOECD加盟国の中で死刑制度を存置し、国家として死刑を執行しているのは日本だけである。
そのような世界的な状況の中で、今世紀に入ってからも延々と死刑執行を続けている我が国は、世界中から非難を浴びる国家になってしまった。

また、死刑制度の存廃は究極の人権問題なので、必ずしも多数決で決めることではないが、仮に世論を意識するとしても、世論にも変化が見られることを直視すべきである。
最新の内閣府の世論調査(2014年)では、「死刑はやむを得ない」とする回答は全体の80.3%で、多数派ではある。しかし、「死刑はやむを得ない」とする人のうち「将来も死刑を廃止しない」という回答は57.5%である。これは全回答者のうちの46.2%で、半数に達しない。しかも特筆すべきは、年齢別にみると、「将来も死刑を廃止しない」を選択した人は、70歳以上では全体の54.6%であるのに対し、20歳~29歳の層では全体の37.1%で半数を大きく割っている。

以上より、政府が国際世論を無視して死刑執行を繰り返す態度に強く抗議するとともに、死刑の廃止とそれに代わる代替刑の在り方について十分な議論を尽くす間、当面、死刑の執行を停止することを改めて求める次第である。

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