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改めて自衛隊の護衛艦や対潜哨戒機を中東地域に派遣することに反対し、恒久平和主義や立憲主義、法治主義の遵守を求める会長声明

2020年01月24日

東京弁護士会 会長 篠塚 力

政府は、2019年12月27日の自衛隊の護衛艦1隻及びP3C対潜哨戒機を中東アデン湾等へ派遣する閣議決定(以下「本閣議決定」という。)に基づいて、本年1月10日、派遣の実施を命令した。
これに対し当会は、閣議決定当日に、「自衛隊の護衛艦や対潜哨戒機を中東地域に派遣することに反対する会長声明」を発し、その中で、今般の自衛隊の中東海域への派遣は、恒久平和主義や立憲主義、法治主義に反するものである旨指摘した。
すなわち、本閣議決定及びこれに基づく自衛隊艦船等の中東海域への派遣には、様々な憲法上の問題があるところ、派遣海域の周辺では、本年1月3日に米国がバグダッド空爆を実施してイラン革命防衛隊のソレイマニ司令官を殺害し、これに対してイランが1月8日に、イラク国内にある複数の米軍基地に向けて十数発以上の弾道ミサイルを発射し、基地内の複数の建物が破壊された。これによって、中東地域の緊張状態は一気に高まり、同日夜にもアメリカ大使館のある地区に2発のロケット弾が撃ち込まれた。さらに、同日、テヘランの空港からウクライナ国際空港へ向けて離陸したボーイング737型旅客機がイラン側の防空網の誤射によって墜落し、乗客乗員176人が死亡する事態まで生じている。これらの事態に照らすと、派遣海域も戦闘地域あるいはこれに準ずる危険な地域と化する恐れが強くなっている。そのため、自衛官らの生命身体へのリスクが昨年末の時点より一層大きくなったことは明白である。
政府は、以上の状況に鑑みて、直ちに上記閣議決定に基づく派遣命令を白紙に戻すとともに、防衛省設置法は派遣の法的根拠とならないことを確認すべきである。
よって、当会は、今般の自衛隊の中東海域への派遣につき、改めて反対し、政府に対し、恒久平和主義や立憲主義、法治主義の遵守を求めるものである。

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