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自衛隊の護衛艦「たかなみ」を中東海域に派遣したことに抗議し、恒久平和主義や立憲主義、法治主義の遵守を求める会長声明

2020年02月06日

東京弁護士会 会長 篠塚 力

政府は、2019年12月27日に、自衛隊の護衛艦1隻及びP3C対潜哨戒機を中東アデン湾等へ派遣する旨閣議決定し(以下「本閣議決定」という。)、これに基づいて、本年1月10日、自衛隊に派遣命令を出し、同月11日、哨戒機2機が那覇航空基地を出発した。
これに対して当会は、本閣議決定当日に「自衛隊の護衛艦や対潜哨戒機を中東地域に派遣することに反対する会長声明」を、本年1月24日に「改めて自衛隊の護衛艦や対潜哨戒機を中東地域に派遣することに反対し、恒久平和主義や立憲主義、法治主義の遵守を求める会長声明」を発した。そして、その中で、今般の自衛隊の中東海域への派遣は、恒久平和主義や立憲主義、法治主義に反するものである旨を指摘するとともに、本年初頭からの米国とイランの間の攻撃と報復攻撃やイランによるウクライナ機の誤射等の状況に照らし、派遣海域が戦闘地域ないしこれに準じる危険な地域と化する恐れが強くなっており、自衛官らの生命身体へのリスクが一層大きくなったことに警鐘を鳴らした。
その後、1月26日には、イラクのバグダッドにあるアメリカ大使館の敷地にロケット弾3発が着弾し、これがイラクの親イラン武装組織による米国に対する報復である可能性が指摘されていることや、イラクでは反米感情が高まっており、同日アブドルマハディ首相が、イラクが戦場になる恐れについての懸念を表明したことなどが報道されている。
このように、中東海域の情勢は安定したとはおよそ言いがたい状況にあり、いつ「戦闘地域」となるか予断を許さない。そのような状況で自衛隊を派遣すれば、派遣された自衛官らが戦闘に巻き込まれ、憲法が禁止する「武力行使」に至る可能性も否定できない。にもかかわらず、去る2月2日、護衛艦「たかなみ」は、横須賀基地を出発した。
すでに指摘しているとおり、今般の自衛隊の中東海域への派遣は恒久平和主義や立憲主義、法治主義に反するものである上、上記のような情勢に鑑みれば、「たかなみ」の派遣決定は撤回されるべきであったのに、派遣が強行されたことは極めて遺憾であり、当会は、改めて強く抗議する。

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