東京弁護士会

9.1関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式典のための公園占用許可につき不当な誓約書の提出を条件とすることの撤回を求める会長声明

2020年06月22日

東京弁護士会 会長 冨田 秀実

東京都は、今般、本年度の「9.1関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式典」開催のため、同追悼式典の実行委員会が、東京都立横網町公園の占用許可を申請したのに対して、誓約書の提出を占用許可の条件とし、誓約書の提出がなければ、占用を許可しないと言明した。誓約書の内容は、「公園管理上支障となる行為は行わない」、「遵守されないことにより公園管理者が集会の中止等、公園管理上の必要な措置を指示した場合は、その指示に従います。また、公園管理者の指示に従わなかったことにより、次年度以降、公園地の占用が許可されない場合があることに異存ありません」などというものである。
同追悼式典は、同公園において毎年9月1日に開催されてきた式典である。関東大震災時に「朝鮮人が井戸に毒をいれた」等のデマが流布したことなどにより、自警団や軍隊、警察による殺傷事件が起きた。政府の「災害教訓の継承に関する専門調査会報告書(2008年3月 内閣府中央防災会議)」は朝鮮人らの虐殺犠牲者数を、震災死者数(約10万人)の「1~数%」に当たると指摘している。こうした悲劇を踏まえ、同公園に1973年、朝鮮人犠牲者追悼碑が建立され、40年以上追悼式典が行われてきた。同追悼式典は、犠牲者を追悼するためのものであり、管理上の支障や混乱なく開催されてきた。これまで、占用許可について、上記の内容の誓約書の提出を求められたことはなかった。
しかるに、2017年以降、朝鮮人虐殺の事実を否定する団体が、同追悼式典と同時間帯に、同追悼式典と近接した場所で、「慰霊祭」を開くようになった。「慰霊祭」において、この団体は、同追悼式典を「歴史捏造」とする看板をかかげ、追悼式典の参加者を挑発するように「不逞朝鮮人」などのことばも用いて、朝鮮人に対するヘイトスピーチを行い、あからさまに同追悼式典を挑発し、同追悼式典の静謐さは破られた。
言うまでもなく、集会の自由(日本国憲法第21条第1項)は、民主政の過程を支える憲法上優越的な人権として尊重されるべきものである。これを受けて公共施設の利用について、地方自治法第244条第2項は、「普通地方公共団体は、正当な理由がない限り、住民が公の施設を利用することを拒んではならない。」としているところ、判例上も、特段の事情がない限り、妨害者の存在を理由として、被妨害者の不利益を帰結するような取扱いはなされるべきではないものと解されているところである(最判平成8年3月15日・民集第50巻第3号549頁)。
その上、上記誓約書の「公園管理者の指示に従わなかったことにより、次年度以降、公園地の占用が許可されない場合があることに異存ありません」などの文言は、不許可を容認させる点で制限が強度であるだけでなく、指示の内容が具体的に示されていないため、萎縮効果をもたらすおそれがあるばかりか、前に述べた経緯を看過して、上記誓約書の提出を条件とすることは、ヘイトスピーチを用いた妨害行為を容認、助長する効果をももたらしかねない。それは、集会の自由の不当な制限であるだけでなく、人種差別撤廃条約、ヘイトスピーチ解消法、「東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例」等、人種差別、ヘイトスピーチの撤廃、解消を企図する法令の趣旨にも合致しない。
当会は、東京都に対し、上記追悼式典のための占用許可にあたって、従来どおり、上記内容の誓約書の提出を条件としないことを強く求める。

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