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消費者庁「特定商取引法及び預託法の制度の在り方に関する検討委員会」において事前拒否者への電話勧誘販売の禁止制度の導入に向けた検討を行うことを求める会長声明

2020年07月31日

東京弁護士会 会長 冨田 秀実

1 当会は,2015年9月7日,「特定商取引法に事前拒否者への勧誘禁止制度の導入を求める意見書」において,特定商取引に関する法律(以下「特商法」という。)を改正し,販売業者の営業の自由にも配慮したミニマムな規制として,「Do-Not-Knock制度」(事前拒否者への訪問販売を禁止する制度)の導入に加えて,既に多くの諸外国で導入されている事前拒否者への勧誘禁止制度である「Do-Not-Call制度」(行政機関等に電話番号を登録した消費者への電話勧誘を法的に禁止する制度。以下「本制度」という。)の導入を求めた。
しかしながら,当時の内閣府消費者委員会特定商取引法専門調査会の審議では,上記規制を必要とする立法事実に疑問を呈する反対意見があり,本制度の導入は先送りされることとなった。

2 その後国会で,2016年改正特商法について,電話勧誘販売・訪問販売による被害の発生状況を踏まえて勧誘規制の強化についての検討を行う旨の附帯決議がなされたところ,2015年以降も,依然として電話勧誘販売による相談・苦情の件数は高い水準を維持しており,2018年度には増加の兆しが見られた(独立行政法人国民生活センター「消費生活年報2019」(2019年10月)13頁)。
そうした中で,2020年6月,電力会社から電話営業の委託を受けた大手コールセンターが,①同業他社サービスには何のメリットもないと断定する,②実施していないサービス内容を伝えて不実の説明をする,③顧客が契約を断ったり,書面を見て検討すると言ったのに,勝手に電話で契約が成立したことにする,などといった不正を行い,これを通話記録の捏造・改ざんにより隠蔽していたことが発覚した。
上記行為は,不実告知等の禁止行為(特商法第21条)に該当するが,現行特商法では,無差別の電話勧誘を許容した上で再勧誘の禁止規定(勧誘を受けた消費者が明示的に拒否した場合に限り,勧誘の継続や再勧誘が禁止される。)を設けるにとどまるため,上記事案が発生してしまったと考えられる。同事案は,消費者被害の実効的な予防・救済のためには,より実効的な勧誘規制が必要であることを再認識させるものであった。
仮に本制度が導入されていれば,事前拒否者との関係(とりわけ電話勧誘販売のターゲットにされやすい高齢者との関係)で上記のような違法・不当な電話勧誘による被害を未然に防止できていただけでなく,電話勧誘を受けるか否かについて消費者の意思を尊重すべきことが法律上明確になることで,事業者において消費者の意に反するような電話勧誘をしないよう慎重になることが期待でき,事前拒否者以外の消費者との関係においても上記被害を抑止することができていたものと考えられる。

3 折しも消費者庁は「特定商取引法及び預託法の制度の在り方に関する検討委員会」を設置し,特商法改正の議論が行われているが、本年7月28日付の同検討委員会の報告書骨子(案)では本制度の導入は取り上げられていない。
そこで当会は,以上のような状況に鑑み,また,電話勧誘販売に関する特商法の規制を実効的なものにするという観点から,同検討委員会において,喫緊の課題として,直ちに本制度の導入に向けた検討を行うことを求める。

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