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被爆75年目の夏を迎えるにあたっての会長談話

2020年08月06日

東京弁護士会 会長 冨田 秀実

今年もヒロシマ・ナガサキの祈りの夏を迎えました。原爆が投下されて75年目の今年は、新型コロナウイルス感染拡大により、慰霊の式典は規模を縮小して開催されますが、犠牲者を悼み、核廃絶を誓う想いに変わりはありません。
おりしも、広島の原爆投下後に発生した「黒い雨」の降雨指定地域外で雨に打たれた被害者が被爆者援護法での救済を求めた訴訟において、本年7月29日に広島地方裁判所は、原告84人全員の請求を認容し、被爆者健康手帳の交付を命じる判決を言い渡しました。この判決は、改めて原爆の被害が極めて広範囲にかつ長期間に及ぶものであることを知らしめるとともに、被爆者の救済の範囲を新たに拡大したものであり、核廃絶を目指す市民を勇気づけるものと言えます。
しかし、戦争における唯一の被爆国として、核廃絶を目指してきた我が国は、2017年に採択された核兵器禁止条約に未だ署名すらしていません。政府の姿勢の背景にある核の傘・核抑止力論が、果たして核兵器の削減や戦争抑止に続く道であるのか、非人道的で絶望的な被害をもたらす核兵器という圧倒的な力による支配を無批判に肯定するものでしかないのか、われわれは常に考えなければならないでしょう。
そのような中でも、NHK広島放送局が本年実施した日米の18歳から34歳の青年に対するインターネットでの意識調査によると、アメリカの若者も、核兵器の保有は必要がない、原爆投下を正当化しないという意見が多数を占めつつあることが明らかになりました(8月3日報道のNHKニュース)。この調査結果は、核廃絶に向けた未来に明るい希望を抱かせるものといえるでしょう。
われわれは、憲法前文の平和的生存権、憲法9条の戦争放棄、戦力不保持の理念に基づいて、平和を愛し核廃絶を目指す世界の市民とともに、我が国が戦争における唯一の被爆国として、核廃絶へのリーダーシップを発揮することを求めます。

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