東京弁護士会

憲法記念日にあたっての会長談話

2021年05月03日

東京弁護士会 会長 矢吹 公敏

1 1947(昭和22)年5月3日に日本国憲法は施行されました。
当時、わが国は戦争によって破壊された市民生活を取り戻す途上にあり、海外で捕虜として留められた者や戦地に取り残された人々がわが国に帰国することも容易でない中で、国民は戦争の惨禍を肌で感じていました。
そのような状況の中で、戦争を永久に放棄することを宣言し、国民が主権者として国の意思を決め、国は一人一人の国民の基本的人権を擁護しなければならないとした日本国憲法が成立し、その後75年の間改正されることなく、国民に受け入れられ、自らの憲法として息づいています。この憲法の価値を護り、それを支えてきた国民の意思を尊重しなければなりません。
世界を見渡せば未だ紛争が止まないだけでなく、国家間の緊張の高まりの中で、戦争放棄・戦力不保持を宣言した憲法9条のもと、敵基地攻撃能力を持つべきであるという議論もあります。恒久平和主義の理想と自国の安全保障という現実について、どのように考え、判断していくかが問われています。
2 また、基本的人権の問題は、非日常の場面にこそ大きな問題となり、新型コロナウイルスが蔓延している状況においても考えなければなりません。今年も昨年に引き続き世界中で新型コロナウイルスが猛威を振るっており、わが国も例外ではありません。長く続く自粛生活によって市民生活に重大な支障が生じています。感染防止のための諸施策と市民生活の自由の確保との調和をいかに図るかが喫緊の課題となっています。
私たちは、憲法が保障する幸福追求権の保障の観点から、学習権、財産権、営業の自由や移動の自由といった多くの基本的人権が不当に制約されないように注視していく必要があります。また、新型コロナウイルスと戦っている医療従事者やその家族が、いわれのない誹謗や中傷にさらされることがないようにすることも個人の尊重を規定した憲法の要請するところであると考えます。
3 国は、基本的人権の尊重という点からダイバーシティに配慮し、心のバリアフリー化などへの理解を深める社会を作っていく責務を負っています。取組みが遅れているジェンダー(トランスジェンダーの方々を含む)平等の問題、さらには同性婚や夫婦別姓などの課題への取組みの推進はその現れといえます。
一方で、私たち自身も、自分と違う立場や考え方があることを理解することが求められています。憲法の保障する基本的人権の内容は広がりを持ち、時代とともに豊かになっていくことが期待されています。その保障については「ここまででいい」という限界があるわけではありません。
4 基本的人権の擁護と個人の尊厳という憲法の基本理念は今も輝きを失っておらず、私たち東京弁護士会は、この基本理念に基づいて憲法をこのように広がりを持つものと捉え、人権の護り手として、国民に寄り添い、必要な法的支援を提供するなどして、その期待に応えられるようよりいっそう邁進いたします。


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