東京弁護士会

入管法改正案(政府提出)の採決に反対し、廃案を求める会長声明

2021年05月17日

東京弁護士会 会長 矢吹 公敏

現在、衆議院で審議されている政府提出の出入国管理及び難民認定法改正案(以下「本法案」という。)について、明日にも強行採決の可能性が報じられている。
本法案は入管の「裁量による支配」を維持しつつ、さらに、退去強制手続関連の罰則を多数創設し、難民申請者の強制送還を一部解禁するなど、対象となる外国人の権利を広汎に制限する一方、収容期間の上限設定、司法審査の導入、難民認定制度自体の適正化といった真に必要な改善はおしなべて見送っている。このような事態は、当会に所属する弁護士が取り扱ってきた多くの難民事件、入管事件の実態からすれば、到底受け容れがたい。
本法案に対しては、当会は、本年3月8日付会長声明で反対する旨表明しているが、その後も、3月31日に国連人権理事会の特別報告者と恣意的拘禁作業部会が共同書簡において、国際的な人権基準を満たさない旨の懸念を表明し、4月9日には国連難民高等弁務官事務所が「非常に重大な懸念」を内容とする見解を発表した。また、5月11日には国際人権法・憲法の研究者ら124名が廃案を含む抜本的な再検討を求める声明を出している。当事者はもちろんのこと、多数の団体、著名人、学生、若者たちなどの市民も、デモ、SNSなどで本法案に反対する抗議の声を上げ、その声は日増しに拡大している。
本法案が提出された後、本年3月6日には、名古屋出入国在留管理局収容場で収容されていたスリランカ国籍の女性、ウィシュマ・サンダマリさん(当時33歳)の死亡事件が発生した。入管においては、2010年以降だけでも10名以上の被収容者(いずれも20代~50代)の死亡事件が発生している。ウィシュマさんの死亡事件の原因解明は、本法案の一つの柱が収容制度の見直しとされている以上、入管の法運用の問題点や法改正の適否を明らかにするために必要不可欠である。
ところが、政府は、第三者機関による調査を行わず、出入国在留管理庁に調査を委ねたばかりか、ウィシュマさんの収容施設内での状況を撮影したビデオの国会議員への開示すら頑なに拒否している。同事件の調査報告書の提出は未了であり、中間報告書においては医療記録の「(薬の)内服ができないのであれば点滴、入院」「仮放免してあげれば良くなることが期待できる」といった複数の医師の判断への言及が一切なく、むしろ「医師から点滴や入院の指示がなされたこともなかった」と事実に反する記載となっている等が報じられている。この入管内の重大事件が解明されないまま、入管の権限を拡大する本法案の採決を強行することは、断じて許されない。
本法案は、内容においても、また、審議の前提となる入管内の重大事件の解明を頑なに回避する政府・与党の審議態度においても、これを許容する余地はない。
当会は、改めて本法案に反対し、その廃案を求めるとともに、今後、外国人の人権に配慮した抜本的な入管法改正を求める。

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