東京弁護士会

少年法「改正」に関する会長声明

2021年06月04日

東京弁護士会 会長 矢吹 公敏

本年5月21日、参議院において、「少年法等の一部を改正する法律」(以下「本改正法」という。)が可決成立した。 
本改正法は18歳・19歳の者を「特定少年」としたうえでこれに対する特例を定め、18歳未満の者とは異なる取扱いをすることとした。すなわち、18歳・19歳の「特定少年」につき、①原則逆送の対象事件を死刑または無期若しくは短期1年以上の範囲に拡大し、②家庭裁判所における保護処分の決定は、犯罪の軽重を考慮して相当な限度を超えない範囲内で行わなければならないとし、③ぐ犯を適用対象からはずした。また、④公判請求された場合に推知報道の禁止を解禁し、⑤不定期刑や資格制限排除の特例が適用されないとしている。
しかし、そもそも少年法の理念は、少年の成長発達権を保障することにあるが、このような改正は、少年から立ち直りの機会を奪い、かえって再犯のリスクを高めることになりかねない。
これまで当会は改正案の上記①~⑤の点について、繰り返しその問題点を指摘してきた。にもかかわらず、これらに関する修正がなされないまま本改正法の成立に至ったことは極めて遺憾である。改正法の施行にあたっては、これらの各問題点を考慮し、国会審議での議論を踏まえ、少年法の理念に則り適切な運用をすることが求められる。
すなわち、①に関し、逆送の判断にあたっては、家庭裁判所におけるきめ細かな調査及び適正な事実認定に基づき、犯罪内容や結果といった犯情の軽重のみならず、非行の背景や再非行の可能性といった要保護性を十分に考慮した運用がなされなければならない。この点は、本改正法案に対する参議院法務委員会の附帯決議(以下「附帯決議」という。)でも示されているところである。
②に関し、保護処分の決定においては、犯罪内容や結果(犯情)の軽重は責任の上限を画するものに過ぎないものとし、その範囲で、少年の要保護性に応じた適切な処分を選択する運用がなされるべきである。この点は、国会審議の過程で政府からも答弁がなされているところである。また、本改正が、少年審判における処遇決定、調査官の社会調査における実務、鑑別所の鑑別実務、少年院での処遇や保護観察の運用などに、少年の更生等を阻害するような影響を与えてはならないことが強く意識される必要がある。
③に関しては、現行少年法がぐ犯を保護の対象とし、少年の環境調整等を図ることで少年の成長発達権の保障や非行防止に重要な役割を果たしてきたことに鑑み、現行法上ぐ犯にあたる18歳・19歳の者に対する適切な保護、支援が後退しないような法制度が早急に検討されるべきである。
④に関してであるが、インターネットが発達・普及した現代社会においては、一度公開された情報は拡散され半永久的に社会に残存するため、いったん報道されると、「特定少年」の成長発達権を侵害し更生の妨げとなる可能性が極めて高く、本改正がなされたことは極めて遺憾である。推知報道の一部解禁が特定少年の「健全育成」及び更生の妨げとなる可能性は附帯決議においても指摘されており、そのような問題が生じた場合には法改正を含めた速やかな対応がなされるよう、本改正によって生じる影響を注視すべきである。
⑤の前科による資格取得制限に関しても、少年の社会復帰を促進し、再犯を防止する必要性の観点から、関係法令の法改正を含めた、しかるべき措置が政府全体で速やかに検討されるべきである。この点、附帯決議でも同様の趣旨が盛り込まれたところである。
当会は、本改正法の施行によって、少年の権利擁護と成長発達権の保障という少年法の理念が損なわれることのないよう、改正法の下での実務の運用を注視すると共に、同理念に沿った取り組みの充実・強化を図ることを決意し、ここに表明する。

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