アクセス
JP EN

憲法記念日にあたっての会長談話

2022年05月03日

東京弁護士会 会長 伊井 和彦

1947(昭和22)年5月3日に日本国憲法が施行され、今年で75周年を迎えます。
憲法施行当時、わが国は戦争によって破壊された市民生活を取り戻す途上にあり、国民は戦争の惨禍を肌で感じていました。日本国憲法は、二度とそのような過ちを繰り返さないため、主権者たる国民が国の意思を決めると定め、戦争を永久に放棄することを宣言し、一人一人の国民の基本的人権が尊重されるべきことを定めました。この憲法の基本理念は、私たち国民の実感によく馴染むものであり、その後改正されることなく、今日に至っています。
しかし、日本国憲法は、今、その価値が問われる重大な局面を迎えています。
国外では、本年2月、ロシアがウクライナに対して軍事侵攻を開始し、現在も軍事行動が続き多くの民間人の犠牲が出ており、核兵器使用の威嚇までがなされるに至っています。ロシアによる軍事侵攻は明白な国際法違反です。
また、このようなロシアの軍事侵攻を目の当たりにして、日本国内でも、現実の安全保障の名のもとに敵基地攻撃能力や核兵器のシェアリング保有の議論までが声高になされるに至っており、主権者たる私たち国民がいかに対応すべきかが、鋭く問われています。
国内では、2020(令和2)年から続く新型コロナウイルスの感染拡大が未だ終息しておらず、長く続く自粛生活によって市民生活に重大な支障が生じています。感染防止のための諸施策と、市民生活の基本的人権(生存権・学習権・財産権・営業の自由や移動の自由等)の確保との調和をいかに図るか、が懸案です。新型コロナウイルス感染症とのたたかいは、基本的人権とその保障のあり方を厳しく私たちに問いかけています。
また、「個人の尊重」という憲法第13条の基本理念からは、「各個人の生き方の多様性(ダイバーシティ)への配慮」が不可欠です。国は、広く市民に対して、心のバリアフリー化への理解を深めるための諸施策を行う責務があり、ジェンダー(LGBTQの方々を含む)平等の問題、さらには同性婚や選択的夫婦別姓などを受け入れる大胆な制度改革を含む取組みを推進すべきです。
一方で、私たち市民にも、自分と違う立場や考え方があることを理解し、互いに尊重し合うことが求められています。市民の理解の深まりは、憲法の保障する基本的人権の内容をさらに豊かに深く発展させていくことにつながります。
私たち東京弁護士会は、憲法の価値を支え、広げ、市民の人権の護り手としての立場を堅持し、必要な法的支援を提供するなどして、皆様からの要望、期待に応えられるよう、よりいっそう邁進いたします。

印刷用PDFはこちら(PDF:167KB)