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ウェブサイト上での外国人情報受付に関する会長声明

2004年03月30日

東京弁護士会 会長 田中 敏夫

1 法務省入国管理局は、2004年2月16日より、「不法滞在等の外国人の情報」を同局のウェブサイト上から直接記入できる窓口を開設し、「不法滞在者と思われる外国人」の国籍・名前・人数や、「働いている場所又は見かけた場所等」としてその住所、電話番号、業種などの情報や居住に関する個人情報の提供を電子メールにより受け付けている。
当会は、このような法務省入国管理局が情報提供の受付をウェブサイト上で行うことにつき、即時中止を求める。

2 そもそも不法入国、超過滞在などの情報は旅券や外国人登録の内容などを確認することによって初めて得られるものであり、外見や生活状況からにわかに判明するものではない。然るに、本ウェブサイト上における情報提供は、不法滞在者「と思われる」外国人に関するものであり、受け付けられまた求められている情報は確たる根拠も必要としない単なる通報で足りる。本ウェブサイトが匿名でもできると明記されていることはその証左である。
そして刑法犯罪や行政法犯罪が数多くある中で、殊更「不法滞在等の外国人の情報」を取り上げ、外国人に関する情報提供を募集、奨励することはいたずらに人種差別を助長し、外国人一般に対する漠然とした不安感・反感・嫌悪感などを煽るものといえる。
法務省入国管理局のかかる情報受付は、日本政府が1995年12月に批准したあらゆる形態の人種差別に関する国際条約の第2条(a)「各当事国は、個人、個人の集団又は公益団体に対する人種差別のいかなる行為又は慣行にも従事しないこと、並びに国及び地方のすべての公的権力及び公共団体が、この義務に従って行動することを確保することを約束する」及び同条第4条(c)「国又は地方の公の当局又は機関が人種差別を助長し又は扇動することを認めないこと」に違反する可能性が高いものと言わざるを得ない。
また、このように国家による確たる根拠のない通報の奨励は、監視社会化を促し、国家による権力の濫用のおそれなしとしない。

3 当会は、「あらゆる人種差別を非難し、また、あらゆる人種差別を撤廃する政策及びあらゆる人種間の理解を促進する政策をすべての適当な方法により遅滞なくとる」(あらゆる形態の人種差別に関する国際条約の第2条)義務を履行するため、また、人種・民族・宗教など様々なバックグラウンドを持つ外国人が地域に暮らすことで日本社会が互いの違いを尊重しあう多様で豊かな多民族・多文化共生社会を実現するため、法務省入国管理局に対し、情報受付の即時中止を求めるものである。