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死刑執行に強く抗議し、死刑執行の停止を求める会長声明

2022年07月27日

東京弁護士会 会長 伊井 和彦

昨日、東京拘置所において、1名の死刑が執行された。昨年12月21日の3名の死刑執行に続き、岸田内閣の古川禎久法務大臣による4人目の死刑執行である。
当会は、2020年9月24日の臨時総会において、「死刑制度廃止に向け、まずは死刑執行停止を求める決議」を採択した。その概要は、以下のとおりである。
1 日本社会は早急に死刑制度の廃止に向けて動き出すべきであり、当会は死刑制度の廃止に向けて活動していく。
2 日本の法律から死刑制度に関する規定が削除されるまでの間、死刑執行は停止されるべきである。
3 死刑廃止と併せ、死刑に代わる刑罰として、仮釈放のない終身刑の導入を検討すべきである。
4 国や地方公共団体は、犯罪被害者やその遺族の権利を回復するための施策の拡充を図るべきである。
日弁連も、2016年10月の人権擁護大会(福井)において、「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を採択し、刑罰制度の改革、受刑者の再犯防止・社会復帰のための法制度の整備を求めるとともに、日本において死刑制度の廃止を目指すべきことを宣言している。
当会は、これまでも繰り返し死刑執行に抗議し、死刑執行の停止を求める会長声明を発出してきた。それにもかかわらず、死刑執行が停止されず、昨日も死刑執行が行われたことは、極めて遺憾である。
死刑は、あらゆる人権の根源である生命を国家が剥奪するという刑罰であり、人権保障の観点から根本的な問題を有している。
死刑の廃止又は執行の停止は国際的潮流であり、死刑を国家として統一して執行している国は、OECD加盟国の中では日本だけである。国連(自由権規約委員会、拷問禁止委員会、人権理事会)は、日本に対して、死刑執行を停止し、死刑廃止を前向きに検討すべきであるとの勧告を何度も行っている。
さらに、死刑は、誤判の場合には取り返しのつかない刑罰であるという重大な問題点がある。現に日本では、死刑を宣告されながら後に無罪であることが判明した死刑再審4事件が過去に存在している。その他にも、いわゆる名張毒ぶどう酒事件、袴田事件において、その後に取り消されたものの、一度は再審開始が決定されている。刑事裁判において誤判事件の発生は不可避であり、死刑制度を法制度として維持する以上、死刑の誤判もこれを絶対的に防止することはできない。
当会は、犯罪被害者の権利回復のための施策のさらなる拡充を求めるとともに、昨日の死刑執行に対して強く抗議し、改めて、死刑制度を廃止すること、死刑制度が廃止されるまでの間、全ての死刑の執行を停止することを求める。

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