東京弁護士会

在日コリアンの子どもたちに対する嫌がらせなどの問題に対する会長声明

2003年06月09日

東京弁護士会 会長 田中 敏夫

1.2002年(平成14年)9月17日、朝鮮民主主義人民共 和国が日朝首脳会談で日本人拉致事件を公式に認めて以降、朝鮮学校に通う子どもたちに対する嫌がらせ、脅迫的言動、いじめなどが頻発している。
有志の弁護士らが日本国内の21校の朝鮮学校に通う子どもたちを対象に本年5月に集計したアンケート結果によると、2002年9月17日以降、日本人から何らかの嫌がらせ等を受けた旨回答した子どもの数は、回答者数2710名のうち522名にのぼる。嫌がらせ等の内容は、例えば、制服のスカートに唾をかける、「朝鮮に帰れ」「拉致ってんじゃねえよ」「拉致学校!」「おまえら拉致するぞ。」などの暴言を吐く、「拉致される」「被害者の気持ちになって見ろ」と言いながら蹴る、「朝鮮人はいらねーよ」と言って石を投げる、チマチョゴリをカッターで切るなど、卑劣かつ悪質である。
これらの行為は、憲法第13条、世界人権宣言、国際人権規約、人種差別撤廃条約、子どもの権利条約などにおける人間の尊厳の保障及び人種差別禁止の理念に違反する重大な人権侵害行為であるばかりか、暴行罪、脅迫罪、器物損壊罪等、刑法上の犯罪行為にも該当する。

2.もとより、2002年12月19日付け日弁連会長声明が述べているように、朝鮮民主主義人民共和国における拉致行為は、拉致被害者に対する重大な人権侵害行為であると同時に、逮捕・監禁罪及び国外移送目的略取罪に該当する刑法上の犯罪行為であって、許されるものではない。
しかしながら、在日コリアン(在日韓国人・朝鮮人)の子どもたちに拉致行為に対する何の責任もないことは明らかである。
子どもたちに向けられた上記のような嫌がらせ、暴行、脅迫的言動等は、あえて弱者を標的とする卑劣な攻撃であって、未来ある子どもたちの心に深い傷を負わせる許し難い行為である。

3.当会は、1994年7月7日付け会長声明において、関係諸機関に対し、朝鮮学校の生徒等に対する暴言、暴行の防止と根絶及び捜査の徹底に努めるよう要望した。
また、日弁連は、昨年12月19日付け会長声明において、日本政府に対し、在日コリアンの子どもたちへの嫌がらせや脅迫的言動を防止するための対策を直ちに講じるとともに、国籍や民族が異なっても何人も安全・平穏に生きる権利を保障し、そのための方策を講じ、実現することを要請した。さらに、同日付けで、わが国のすべての人々に対し、在日コリアンの子どもたちに対する嫌がらせや脅迫的言動を決して行わないよう、
国籍や民族が異なっても一人ひとりがお互いの人権を尊重し共生できる社会をつくるよう訴える「緊急アピール」も発表している。
しかし、いまだ日本政府を含む関係諸機関で効果的な対策がとられていない。

4.内閣府が本年4月12日付で発表した「人権擁護に関する世論調査」によると、外国人の人権について日本人と同様に「守るべきだ」と回答した人は、前回調査(97年)の65.5%から11.4ポイント減の54.0%にとどまり、1958年の同調査開始以来、過去最低となったと報告されている。
このような状況のもとで、在日コリアンの子どもたちに対する極めて深刻な人権侵害行為が繰り返されていることに対し、早急に対策を講じることが必要である。
そこで、当会は、日本国政府、東京都および関係諸機関に対し、在日コリアンの子どもたちへの嫌がらせや脅迫的言動等を防止し、安心して学校に通い生活できるための対策を直ちに講じるとともに、在日コリアンを含む在日外国人が安心して平穏な生活を送ることができるような対策を講じることを強く要請する。
当会は、今後とも、国籍や民族の異なる人々が共生する社会の実現に向けて、一層積極的に取り組む決意である。

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