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国及び東京都に対し、関東大震災100年の節目にあたり、人種差別を根絶するための施策等を求める会長声明

2023年08月31日

東京弁護士会 会長 松田 純一

本年2023年9月1日は、1923年の関東大震災から100年の節目にあたる。当会は、関東大震災における全ての犠牲者に対し哀悼の意を表明する。
震災発生直後から、「朝鮮人が武装蜂起し、あるいは放火する」等の差別的な流言(ヘイトスピーチ)が流布し、朝鮮人等に対するヘイトクライムである大規模な殺傷事件が発生した。内閣府中央防災会議の「災害教訓の継承に関する専門調査会報告書」(2009年3月)にも、殺傷事件による犠牲者は震災による死者数の1~数%にあたるとされており、その迫害の背景には朝鮮の人々に対する無理解と差別意識があったことが明確に指摘されている。
関東大震災から100年を経た現在もなお、日本社会に差別意識は根深く、在日コリアン等へのヘイトスピーチ、ヘイトクライムが後を絶たない。
国は、人種差別撤廃条約に基づき、「人種差別を非難し、また、あらゆる形態の人種差別を撤廃する政策及びあらゆる人種間の理解を促進する政策をすべての適当な方法により遅滞なくとること」及び「すべての適当な方法(状況により必要とされるときは、立法を含む。)により、いかなる個人、集団又は団体による人種差別も禁止し、終了させる。」という義務を負っている。
国は、関東大震災から100年となる節目の今年にこそ、根本的な差別意識を解消すべく、ヘイトスピーチ、ヘイトクライムを含む人種差別を撤廃する法整備を行うべきである。
そして、近年の東京都の動きに目を向けると、毎年9月1日に朝鮮人犠牲者追悼碑の前で「関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式典」が開催され、歴代の都知事がこれに追悼文を送ってきたが、今は途絶えている。
2017年以降、上記追悼碑の撤去及び追悼式典の中止を求める団体が、追悼式典と同時間帯に、追悼式典と近接した場所で、集会を開くようになり、追悼集会が静謐に行われることが困難になった。この集会では、2019年には「不逞朝鮮人」などの言葉を用いてヘイトスピーチが行われ、翌年東京都からヘイトスピーチとして認定、公表されている。
本年9月1日を、特別な鎮魂の日と位置づけ、追悼式典を開催した時と場所が近接した、しかも撤去を求める追悼碑の面前での集会となれば、自ずからヘイトスピーチが展開される蓋然性が懸念され、誠に遺憾である。
このような行為が行われること及びそれを容認することは、日本国憲法、人種差別撤廃条約、「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」(ヘイトスピーチ解消法)、「東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例」第11条等の様々な法令の趣旨に反している。
当会は、今後、ヘイトスピーチ、ヘイトクライムが行われることがないように国及び東京都に対して人種差別を根絶するための施策を実施することを強く求めるものである。

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