東京弁護士会

日米地位協定の抜本改定を求める会長声明

2004年04月13日

東京弁護士会 会長 岩井 重一

2004年4月2日の日米合同委員会で、日米両政府は、日本と米軍の捜査協力を強化するために、日本政府の米兵被疑者の起訴前の身柄引渡を求める可能性がある場合(任意捜査など)と引渡しが行われた場合、取調べに米軍司令部代表者の同席を認めること、並びに身柄の引渡しを要求できる範囲はいかなる犯罪も含むことを確認する旨の日米地位協定17条の運用についての口頭合意をした。しかし、捜査が見えやすくなるという点で一定の評価をしうるものの、身柄の引渡しが米側の「考慮」(裁量)に委ねられるという1995年の日米合同委員会合意による原則には変化はない。
全国の米軍専用施設の75%が集中する沖縄県では、米軍・米軍人等による事件・事故が続発し、2003年に沖縄県警が検挙した米軍関係者による犯罪は112件133人にものぼっている。米軍人による犯罪の防止及び刑事司法権の行使、さらには被害の救済についても、日米両政府によりなされてきた日米地位協定の運用改善では不十分なままであり、抜本的な見直し・改定が必要である。
この他にも、米軍人・軍属らによる公務外の不法行為やその家族らの不法行為について加害者から直接賠償を得られることが困難な状況下で日米両政府による補償が不十分であること、国内航空法が適用されないため、米軍演習に伴う航空機の飛行高度や騒音基準を規制する方法がなく、航空機事故や騒音による被害が増大していること等の問題がある。また、米国内においては厳しい環境基準が適用されているが、日本国内の米軍基地については、米国内の環境基準の適用も日本の基準の適用も明記されていない。このため、基地内の環境汚染も深刻な問題となっている。
さらに、日米地位協定に関わる日米合同委員会の合意事項の公表も十分に実施されておらず、基地に関わる被害について、沖縄をはじめ関係地方自治体や国民の声を日米政府間協議に十分反映させることもできない状況にある。
日米地位協定は、1960年に締結されて以来、一度も改定されず今日に至っており、これら米軍基地の存在に伴うさまざまな問題について、沖縄県をはじめ多くの自治体から日米地位協定そのものの抜本的改定を求める意見や決議がなされている。
米軍基地に派生する問題は、基本的人権の擁護の観点から看過出来ないものであり、日本弁護士連合会も、2002年8月の理事会決議をはじめ、度々日米地位協定の見直しを求めてきた。当会においては、1997年以来、毎年、沖縄における米軍基地にかかわる被害・人権侵害等の状況について訪問調査を重ねてきた。当会は、その調査結果を踏まえ、日米両政府に対し、日米地位協定について、少なくとも以下の点について、運用改善にとどまらず、速やかに抜本的な改定をするよう求めるものである。

1 刑事手続の規定について、日本が第一次裁判権をもつ事件の被疑者の身柄の拘束は原則として日本が行うこととするなど、米軍優先の手続を改めること。
2 米軍人・軍属らによる公務外の不法行為及びその家族らの不法行為について、日米両政府の責任において全面的かつ速やかな補償をなすように改めること。
3 米軍基地内の環境保全について、日本国法令に基づく環境基準を適用するなど米軍・米国政府の責務を明確に定め、基地返還時の環境汚染に関する原状回復義務を米国政府が負うようにすること。
4 米軍基地の存在に起因する人権侵害を防止し、被害の完全な救済を実現するため、日米地位協定の各条項の全面的な見直しを行うこと。
5 日米合同委員会の合意事項を速やかに公表すること。
当会は、今後とも、日米地位協定改定の実現に向けて全力で取り組む決意を表明する。

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