多国間共同開発兵器の第三国輸出に反対し撤回を求める会長声明
2024年04月16日
東京弁護士会 会長 上田 智司
政府は、本年3月26日に、昨年末に合意した日英伊の共同開発による次期主力戦闘機を、開発当事国等以外の他国にも輸出しうるものとするために防衛装備移転三原則の運用指針を改定する旨閣議決定した。
そもそも我が国は、1967年(昭和42年)に佐藤内閣が、武器輸出禁止国として①共産主義諸国、②国連決議により武器の輸出が禁止されている国、③国際紛争当事国またはその恐れがある国を指定し、その他の国も原則として禁止する旨答弁した。その後1976年(昭和51年)には、三木内閣において、国会における十分な審議を経て、さらに厳しく限定する政府統一見解が閣議決定された(武器輸出三原則)。
しかし、この原則は、2014年(平成26年)に安倍内閣によって、防衛装備移転三原則として、名称だけでなくその内容も劇的に緩和されてしまった。
これは武器輸出を原則禁止から原則容認へと転換するものであり、武器を輸出しない平和国家として国際的な役割を果たしてきた我が国の歩みを変質させるものであり、当会は、同年4月15日付けで
「「防衛装備移転三原則」に反対する会長声明」を発出した。
その後、2022年(令和4年)には、紛争当事国であるウクライナへの防御的装備の支援に際して防衛装備移転三原則の運用指針を変更し、さらに2023年(令和5年)12月22日、イギリス・イタリアと次期主力戦闘機を共同開発する旨の合意が成立したことを前提として、防衛装備移転三原則とその運用指針を改定して、共同開発国やライセンス元に防衛装備品を輸出することを認める旨の閣議決定をした。
そして今般の閣議決定は、防衛装備移転三原則の運用指針をさらに改定して、「紛争当事国を除外する」という従前の限定は残しつつ、共同開発戦闘機の輸出を共同開発国やライセンス元以外の第三国(現時点において15か国)に対しても認めるとして緩和したものである。この点については、国連憲章に沿った目的以外の使用を禁じる「防衛装備品・技術移転協定」締結国という限定を加えるとしているが、これでは、対象国が将来紛争当事国になる危険性があるだけでなく、今後さらに対象国が拡大される恐れもあるため、歯止めのない緩和につながりかねない。
いうまでもなく、戦闘機は殺傷兵器そのものであり、今般の閣議決定は、多くの国に殺傷兵器を輸出することで、我が国が戦争に加担することとなる恐れをますます強くするものであり、平和国家日本を変質させてしまった2014年(平成26年)の防衛装備移転三原則の策定の延長線上において、これまでの我が国の政策を質的にさらに大きく転換するものというべきであるから、憲法の恒久平和主義の理念に明らかに反するものである。たとえ国会審議を経たとしても明らかに憲法違反である決定を一内閣の閣議決定によって行ったことは、断じて許されるものではない。
当会は、明白な殺傷兵器である戦闘機を広く輸出することを認めた今般の閣議決定は、明らかに憲法の理念に適合しないものであり、これまでにも増して憲法の徹底した恒久平和主義の原理に反するものであるから、これに強く反対し、撤回を求めるものである。
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