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憲法記念日にあたっての会長談話

2024年05月03日

東京弁護士会 会長 上田 智司

1947(昭和22)年5月3日に日本国憲法が施行され、今年で77周年を迎えます。敗戦後の「新日本」が誕生して77回目の誕生日を、皆様とともに祝いたいと思います。

日本国憲法が施行されたことにより、この国は、基本的人権を尊重し、国民を主権者とし、恒久の平和を念願する、近代立憲主義に基づく国として生まれ変わりました。戦後の現実の日本社会には様々な問題が生起し、現在も進行中の問題は多々ありますが、それでも、個人を尊重し個人の権利や自由が保護されなければならないという意識が社会に根づいてきていること、少なくとも建前としては国民主権が守られていること、戦後、(自衛官が海外派遣から帰還した後に自殺されたという痛ましい事件はありましたが)戦場における自衛官の戦死者が出ていないことは、日本国憲法が施行され効力を保っていることによる部分が大きいでしょう。

憲法は、言うまでもなく、個人が尊重され、その権利や自由が侵害されないように、国の権力行使を制限するところにその基本的な働きがあります。

しかし、近年、特に防衛問題の局面で、憲法上の制約を無視した政府の決定が目に余るようになってきています。最も典型的な例は集団的自衛権の行使を容認した2014(平成26)年7月1日の閣議決定ですが、最近も、2024(令和6)年3月26日、防衛装備移転三原則の運用指針を改定し、英国、イタリアと国際共同開発中の次期戦闘機の第三国への輸出を解禁する内容の閣議決定が行われ、当会は、これに対し、殺傷兵器そのものである戦闘機を多くの国に輸出することで、我が国が戦争に加担することとなる恐れをますます強くするものであり、憲法の恒久平和主義の理念に明らかに反するとして、強く反対し撤回を求める会長声明を発出しました。

上記のような事態からも分かるように、憲法を守るということは、単に憲法の文言を変えさせないということに尽きるものではありません。私たち自身が、日本国憲法の受け手や傍観者に留まるのではなく、日本国憲法を国の最高法規として扱うべしというルールを権力者に受け入れさせ続ける不断の努力をする必要があります。

私たち東京弁護士会は、これからも、憲法の価値を皆様と分かち合い、憲法の文言だけでなく憲法の実質的な価値について社会に発信し、この国のあり方が憲法の理念に沿い、それをいっそう実現するものとなるよう、邁進いたします。

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