東京都平和の日を迎えて空襲等民間戦災者に対する援護法の制定を改めて求める会長談話
2026年03月10日
東京弁護士会 会長 鈴木 善和
本日は東京都平和の日です。1945(昭和20)年3月10日未明の大空襲により、東京では一夜にして10万人の尊い命が奪われ、街は焼け野原となりました。東京都は1990(平成2)年、戦争の惨禍を二度と繰り返さないことを誓い、条例により3月10日を「東京都平和の日」と定めました。あれから81年を経た今日、東京は廃墟から活力ある大都市へと変貌しました。これは、平和のもとで社会が発展し、戦争の記憶を継承してきた都民の不断の努力によって実現したものです。平和を誓うこの日にあたり、戦争被害の未解決の課題に向き合うことは、私たちの責務です。
その課題とは、空襲等民間戦災者に対する援護法の制定です。軍人・軍属の方々には手厚い補償が行われているのに対して、空襲等民間戦災者の救済は取り残されたままとなっています。当会は昨年の終戦の日の会長声明において、民間戦災者の救済は一刻の猶予も許されないと訴えました。しかし、その課題に向き合うために立案された民間戦災者に対する特別給付金の支給と実態調査等を内容とする超党派議員連盟による法案は、いまだ国会提出に至っていません。
一方で、前向きな動きも見られます。昨年11月6日の参議院本会議では、高市総理から、空襲被害者の筆舌に尽くしがたい労苦への認識が示され、議員立法の動きを注視しつつ、政府として何ができるかを検討する旨の答弁がありました。また、今年2月の衆議院総選挙に際しては、各政党から前向きな意見表明がなされ、自民党からは、戦後80年を迎える中で極めて重要な課題であり、被災者の高齢化を踏まえ対策が急がれるとして、超党派議員連盟と緊密に協議する姿勢が明確にされています。これらは、立法に向けた環境が整いつつあることを示すものです。
しかし、被災者のご年齢を考えれば、残された時間は多くありません。3月6日に議員会館内で開かれた集会では、日本弁護士連合会からも「空襲被害者への補償が実行されない限り、戦後は終わらない」との認識が示されました。
民間戦災者の救済は、国家による戦争被害の公平な回復であり、民間人の尊厳を守るためには、まずもって、過去に被害に遭われた方の補償を進めることが求められます。当会は、本日、東京都平和の日を迎え、改めて民間戦災者に対する援護法の早期成立を強く求めます。
私たちは、ウクライナ、ガザ、イラン等で続く戦争や武力行使により、多くの子ども達を含む民間人の生命と生活が破壊される実情を目の当たりにしました。国際社会における民間人保護と国際人道法の後退を含む法の支配の揺らぎを深く憂慮しています。国内外を問わず、民間人の尊厳を守る姿勢を示すことは、法の支配を支える基盤であり、私たちが歴史から学ぶべき核心です。二度にわたる世界大戦の惨禍の経験を受け継いだ私たちは、文明の基盤である平和と人間の尊厳を守り抜く責務を負っています。
戦争をしない、させないとの決意を新たにし、弁護士の使命である基本的人権の擁護と社会正義の実現のため、これからも平和を訴え続けることをここに表明します。
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