最高裁判所判決を受けた対応としての厚生労働省告示の撤回と全ての生活保護利用者に対する平等かつ全面的な補償の実施を求める会長声明
2026年03月24日
東京弁護士会 会長 鈴木 善和
1 2025年6月27日、最高裁判所第三小法廷は、2013年8月から3回に分けて実施された生活扶助基準の引下げ(以下「本引下げ」という。)に係る保護費減額処分の取消し等を求めた訴訟(大阪・愛知訴訟)の上告審において、本引下げの違法性を認め、保護費減額処分を取り消す判決(以下「本判決」という。)を言い渡した。
2 本判決に対し、厚生労働省は、2026年2月20日、生活扶助費の追加給付を行うとして発出した告示(令和8年厚生労働省告示第43号。以下「本告示」という。)において、本引下げ当時の生活保護利用者の生活扶助費につき、①本判決で違法とされなかった「ゆがみ調整」による減額を維持しつつ、これに加えて、②本判決で違法とされた「デフレ調整」(-4.78%)に替え、下位10%の低所得世帯の消費実態との比較による新たな減額調整(-2.49%)を行うとした。また、大阪・愛知訴訟を含む同種訴訟の原告ら(ただし、判決が確定した者。以下「確定原告ら」という。)については、上記②による減額相当分について特別給付金(以下、本告示と合わせて「本対応策」と総称する。)を支給するとした。
3 しかしながら、本対応策には、本判決の趣旨を没却するものと言わざるを得ない。第一に、確定原告らについては、取消判決により、本引下げ前の基準による生活保護費との差額の給付請求権が生じているはずであるが、本告示は、その権利内容を不利益に変更するものであって、憲法第29条に抵触する。第二に、上記②の新たな減額調整は、本判決に至る訴訟終盤において、被告の国側がデフレ調整を正当化する根拠として主張したにもかかわらず、本判決が採用しなかったものであり、第一の点と併せ本判決の拘束力(行政事件訴訟法第33条第1項)に由来する紛争の一回的解決の要請に反するものである。第三に、本引下げによる不利益は全ての生活保護利用者に及んでいるところ、確定原告か否かによって追加給付額が異なることは、生活保護の無差別平等原則(憲法第14条、生活保護法第2条)に反するものである。第四に、最高裁判所の判決の趣旨を没却するような対応を事後的に行政が行うこと自体が、三権分立の理念を蔑ろにしており、法の支配にも悖るものといわざるを得ない。
4 当会は、本判決後、2025年7月16日付で「生活扶助基準引下げを違法とした最高裁判所判決を高く評価し、 引下げ分の補償措置、検証及び基準策定の改善を求める会長声明」を発し、早期全面解決を訴えてきた。今般、国及び厚生労働大臣に対し、違法な本告示を撤回し、全ての生活保護利用者に対する平等かつ全面的な補償を直ちに実施することを改めて求める。
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