アクセス
JP EN

憲法記念日にあたっての会長談話

2026年05月03日

東京弁護士会 会長 石原 修

本日、1947(昭和22)年5月3日に日本国憲法が施行されてから79年目の憲法記念日を迎えます。

日本国憲法は、アジア・太平洋戦争及び第二次世界大戦の悲惨な経験と反省の下、個人の尊厳を基本理念とし、国民主権、基本的人権の尊重及び恒久平和主義を基本原則として制定されました。その根本には、個人の権利・自由を確保するために国家権力を法によって拘束する法の支配及び立憲主義という近代憲法の基本原理があります。

人権を取り巻く様々な問題は、子ども、高齢者、障がい者、女性、セクシュアル・マイノリティ、外国人、そして消費者問題や労働問題、公害・環境、刑事事件、犯罪被害者、加害者家族、政教分離をはじめ多岐にわたっており、当会では専門の各委員会が、人権を守る砦となれるよう懸命に取り組んでいます。

全ての人々の人権が守られるためには、当然のことながら日本国憲法が目指す戦争の無い平和な世界を実現し続ける必要があります。

しかし現在、日本国憲法とそれを支える原理・原則は危機に晒されています。政府は去る4月21日、閣議決定と国家安全保障会議により防衛装備移転 三原則とその運用指針を改定し、殺傷能力を有する武器の輸出が解禁され、一定の条件のもとで現に戦闘が行われている国への輸出も可能となりました。日本弁護士連合会では「憲法の恒久平和主義に基づいた平和国家としての日本の在り様を、根本的に掘り崩すものになる」とする会長声明を出しています(日弁連「防衛装備移転の「5類型」による制限の撤廃等による殺傷兵器の輸出の拡大に反対する会長声明」2026年3月18日)。4月23日には衆議院本会議で「国家情報会議設置法案」が可決され、今後参議院での審議が予定されていますが、重要な憲法上の人権侵害につながる可能性があることから、独立した第三者機関による監督を制度化するとともに、人権侵害の可能性等について慎重な審議を行う必要があります(日弁連「現在、「スパイ防止法」として制定に向けた動きのあるインテリジェンス機関強化法制及び外国代理人登録制度についての意見書」2026年2月20日)。

さらに、日本国憲法そのものについて、自衛隊明記や緊急事態対応のために改正が必要との主張もあります。しかしながら、自衛隊明記に関しては、自衛隊は日本国憲法第9条との緊張関係があるために、我が国を防衛するための 「必要最小限度」性が問われてきており、自衛隊を憲法に明記することによって「公認」すればこのような歯止めはなくなり、自衛隊の組織及び活動範囲の無制限な拡大を招くことで、同9条が有名無実化したり、市民の基本的人権が制約されるなどの問題点があります(当会「いわゆる「9条の2」改憲案について、立憲主義の理念と恒久平和主義及び人権保障の観点から問題点を指摘し、懸念を表明するとともに、国会に対し熟議を求める意見書」2019年2月12日)。緊急事態については参議院の緊急集会(憲法第54条第2項)で対応可能であり、緊急事態条項の創設は憲法による人権保障が停止し、深刻な人権侵害が発生する危険があります(日弁連「日本国憲法に緊急事態条項(国家緊急権)を創設することに反対する意見書」2017年2月17日)。

また、世界を見渡せば、ロシアによるウクライナ侵攻は開始以来4年を過ぎても終結が見通せないままに犠牲者が増え続けているほか、本年2月に開始されたイスラエル及びアメリカによるイラン侵攻は、3000人以上の死者が出たと報道されています。ユニセフ(国連児童基金)によれば、イラン侵攻は地域の子どもたちに甚大な犠牲を強いており、これまでに340人以上の子どもが死亡し、数千人が負傷したと報告されています。イスラエルによるパレスチナへの報復攻撃は昨年10月に停戦を迎えましたが、その後も800人以上の死者が出ていると報道され、犠牲者は増え続けています。

国際連合憲章第2条第4項は、「武力による威嚇又は武力の行使」について「慎まなければならない。」と定め、日本国憲法は、諸国民の公正と信義を信頼してわれらの安全と生存を保持しようと決意し、平和的生存権を明文化して戦争と武力による威嚇又は武力の行使を永久に放棄し、戦力を保持せず、交戦権を否認しています。日本は、まさに武力ではなく専ら対話(外交)により平和が実現されるよう積極的に役割を果たすことが日本国憲法において要請されているのであり、政府は、国連憲章、国際法に抵触する関係各国に対し、これ以上犠牲者が出ることが無いよう国連憲章、国際法の遵守を積極的に提示し続けるべき立場にあります。

当会は、本日、日本国憲法の普遍的意義を再確認すると共に、平和を求める市民の皆様の働きと連携しつつ、憲法に基づいて基本的人権が保障され平和が維持される社会を一層推進すべく邁進してまいります。

印刷用PDFはこちら(PDF:117KB)