東京弁護士会

横浜事件に関する会長声明

2006年02月23日

東京弁護士会 会長 柳瀬 康治

 2006年2月9日、横浜地方裁判所第2刑事部は、横浜事件第3次再審請求事件にかかる治安維持法違反被告事件について、免訴の判決を言い渡した。
横浜事件は、第二次世界大戦中である昭和17年7月3日に細川嘉六氏が雑誌の編集者らを出版記念会に招いて催した宴会を「共産党再建準備会」であったとしてその宴会の参加者らを逮捕した泊事件などの一連のフレームアップされた事件の総称である。この事件により、雑誌編集者ら約60人が共産党関係者として治安維持法違反で逮捕され、神奈川県警察部特別高等課の司法警察による過酷な拷問を受け、5名が拷問死(内1名は保釈直後に死亡)させられるに至った。しかも訴訟記録の殆どは当時の司法当局の手で焼却されたとされている。
横浜事件第3次再審請求審においては、2003年4月15日、横浜地方裁判所第2刑事部が再審開始を決定した。これに対し検察官が即時抗告を行ったが、2005年3月10日、東京高等裁判所第3刑事部は、自白が拷問ないし拷問の影響下にされたもので、「自白の信用性には顕著な疑いがある」「無罪を言い渡すべき新たに発見した明確な証拠がある」などとして、即時抗告の棄却決定を行った。この決定は、旧日本帝国の戦時体制のもとで国家権力が、治安維持法を使って犯罪を虚構した事実を指弾したものであり、言論・思想の自由の重要性を改めて確認したものとして、大きな社会的意義を有する。そして、この決定を受けた再審公判においては、誤判の除去及び誤判による被害者(被告人)の権利・名誉の回復を図ることが期待されていた。
ところが、今回、横浜地方裁判所第2刑事部は、治安維持法が昭和20年10月15日に廃止され、同月17日に公布・施行された大赦令により被告人らが大赦を受けているので、旧刑事訴訟法の免訴事由である刑の廃止及び大赦ありたるときに当るとして、免訴判決を言い渡した。
横浜事件の経過に照らすならば、この判決においては、実態審理に踏み込み、拷問による自白強要等の事実を認定して、言論思想弾圧の実態を明らかにするとともに、被告人らに冤罪であることを明確にすべきであった。それにもかかわらず免訴を言い渡した点については、司法に期待される役割を果たしたものとは到底評価できず、極めて遺憾であると言わざるを得ない。よって、本声明を発するものである。

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