東京弁護士会

「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律 及び労働基準法の一部を改正する法律案要綱」に関する会長声明

2006年03月09日

東京弁護士会 会長 柳瀬 康治

1 厚生労働大臣は、平成18年1月27日、厚生労働省労働政策審議会に対し、「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律及び労働基準法の一部を改正する法律案要綱」(以下「本法律案要綱」という。)の諮問を行った。厚生労働省は、同審議会の答申を受けて関係法案を作成し、現在開催中の通常国会へ提出する予定ということである。
当会は、今回の法改正について、すでに平成17年3月23日付、同年11月7日付で意見書を提出しているが、本法律案要綱をうけ、特に問題が大きいと思われる事項に絞って意見を述べることとする。

2 本法律案要綱は、間接差別に関し、「労働者の性別以外の事由を要件とする措置を講ずる場合において、当該要件が当該要件を満たす男性及び女性の比率その他の事情を勘案して実質的に性別を理由とする差別につながるおそれがあるものとして厚生労働省令で定めるものに該当するとき」は、業務の遂行に必要である等の合理的な理由がなければ、当該措置を講じてはならないものとしたうえ、厚生労働省令で定めるものとして、(1)募集又は採用における身長、体重又は体力要件、(2)コース別雇用管理制度における総合職の募集又は採用における全国転勤要件、(3)昇進における転勤経験要件のみを限定して挙げている。
当会は、本法律案要綱がいわゆる間接差別を禁止していること自体については賛成するが、その禁止される間接差別の対象を省令で限定的に定めることとしている点については強く反対するものである。

3 すなわち、間接差別の禁止の導入は、必ずしも意図的な差別であるとは言えず、一見男女間で異なる取扱いをしていると言えないものの中にも、女性が不利となる規定や基準,慣行等が存在し、現行の規制では対応が困難となっていることに着目し、このような問題に対処することを主眼としている。
ところが、本法律案要綱のように間接差別の対象が3つの要件に限定されてしまうと、福利厚生の適用や家族手当等の支給に当たって住民票上の世帯主が要件とされたり、パートタイム労働者が除外されるといったケースも間接差別に該当しないこととなり(これらのケースは、平成16年6月に取りまとめられた厚生労働省「男女雇用機会均等政策研究会」報告書においても、間接差別と考えられる例として挙げられている)、間接差別を法律で禁止する趣旨が没却される。

4 現行法下においても、世帯主・非世帯主、勤務地限定・非限定を基準とした賃金の差を無効とした三陽物産事件(平成6年6月16日東京地裁判決)、正社員・臨時社員を基準とした賃金の差を無効とした丸子警報機事件(平成8年3月15日長野地裁上田支部判決)など、事実上間接差別の禁止を認めたと考えられる裁判例もでてきている。
本法律案要綱のように間接差別の対象が省令で限定されると、これに該当しないケースを裁判で争うことは非常に困難となり、現行の裁判の動向に逆行することとなる。
間接差別として想定されるケースは、指針で例示することによっても十分予測可能であるから、省令で限定列挙するのではなく、指針という形で間接差別の例を示すにとどめるべきである。

5 国連女性差別撤廃委員会(CEDAW)の審議において、日本のコース別人事制度の一般職やパートタイム労働者に圧倒的に女性が多いことは間接差別になるのではないかとの指摘がなされていることからも、間接差別の範囲を限定しない形で法制化すべきである。

以上

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