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死刑執行に関する会長声明

2005年09月16日

東京弁護士会 会長 柳瀬 康治

 法務省は2005年9月16日、大阪拘置所で1名の死刑確定者に対して死刑の執行を行った旨発表した。
今回の死刑執行は昨年9月14日の2名の死刑執行に続くもので、1993年に死刑の執行が再開されて以来10年の間の被執行者の数は47名に達している。
当会は、これらの死刑執行に際して、その都度会長声明ないし談話を発表し、法務大臣に対して、(1)死刑確定者の処遇の現状を含め、死刑制度全般に関する情報を公開すること、(2)国連や欧州評議会の動向を考察し、死刑廃止の是非を含め、わが国の刑事司法、刑罰制度のあり方の議論を国民的規模で行うこと、(3)死刑執行に一層の慎重を期し、死刑制度についてのこれら議論が尽くされるまでは、死刑の執行を行わないことなどを一貫して要望してきた。
この間、国連の国際人権(自由権)規約委員会は、日本政府に対し死刑確定者の通信・面会制限の緩和などその処遇の改善とともに死刑廃止の方向への措置をとることを勧告した。国連人権委員会も同様に、死刑に直面する者の権利保障を遵守するとともに、死刑執行の停止を考慮するよう呼び掛ける決議を可決している。
また、アメリカ合衆国では、死刑執行を停止した州や死刑判決手続の見直しを含む議論が進行中であり、韓国・台湾においては死刑廃止の法案が具体化する状況にある。
さらに、昨年10月8日には日本弁護士連合会の人権擁護大会において、死刑執行停止法の制定を含む具体的な決議がなされた。
今回の死刑執行は、これら国内外における動向を全く顧みないものであって、普遍的な人権の尊重を重視するわが国の国際的立場からも問題があると指摘せざるをえない。
当会は、今回の死刑執行に遺憾の意を表明するとともに、法務大臣に対しては、死刑執行を差し控えて、死刑制度のあり方について議論を行うなど当会が再三にわたって表明してきた事項の実現に向けて誠実に対応されることを重ねて要望する。