東京弁護士会

金融商品取引法案に関する会長声明

2006年05月19日

東京弁護士会 会長 吉岡 桂輔

 「証券取引法等の一部を改正する法律案」等(別称「金融商品取引法案」、以下本法案という。)について、平成18年5月12日に衆議院財務金融委員会で採決され、参議院での審理を残すのみとなっている。しかし、当会としては、衆議院において採択された同法案の内容に下記のとおり重大な懸念を表明するものであり、良識の府である参議院における適切な対応を求める。

  • 1 本法案の商品先物取引分野における重大な不備は2点ある。
    第1に、本法案は、商品先物取引をその規制の対象とはせず、法案に付随して商品取引所法改正を行うに止まったところ、その中では、電話・訪問による不招請勧誘(取引を希望していない消費者に対する勧誘)を禁止する規定を置いていない点である。商品先物取引は、一般消費者が取引員の外務員によるコンプライアンス無視の不当勧誘を受けて取引に巻き込まれ、その後は一方的に誘導されて被害を拡大させていくというのが実態である。かかる被害実態を踏まえた場合、何よりも肝要なのは入り口での規制であり、一般消費者による取引参入は、リスクを承知で自ら積極的に取引を希望した場合にのみ限定されるべきである。被害の歴史が古く不当勧誘の悪質性や被害実態において変わりのない商品先物取引においてなぜ不招請勧誘導入が見送られたのか、理解し難いところである。
    第2に、本法案において、新たに、商品先物取引に損失補填禁止条項が追加されたことは、実務家の立場からはとても容認できない。過去に証券取引法について損失補填禁止条項が導入された結果、従前は示談により多くの被害救済が図られていたが、証券会社側が損失補填条項の存在を盾に訴訟外の示談に応じなくなり、被害救済が大きく後退したという歴史がある。被害を受けた委託者から依頼を受けて提訴に及ぶのは平均的には数件に1件程度の割合と想定されるので、この種の事件を取り扱う弁護士側の処理能力、裁判所側の処理能力を勘案すると、かなりの被害件数が解決されずに放置されてしまう懸念がある。被害者側としても、全件が訴訟となって被害回復に相当の時間と費用を要することとなると、賠償請求自体に消極的となってしまう可能性が大である。
    このように、商品先物取引分野に限定しても、本法案は重大な欠陥を抱えている。
  • 2 このほか、以下の点についても、なお一層の議論が尽くされる必要がある。
    まず、小規模乱立の悪質事業者による消費者被害が発生し続けている領域について、本法案では一切規制されていない。具体的には、海外商品先物取引、海外商品先物オプション取引については、本法案及び関連整備法案において、登録制度すら整備されていないし、また、証券業登録を受けないまま無登録で営業するいわゆる未公開株商法について、監督権限の発動が困難なまま放置されているのである。
    さらに、本法案においては、適合性原則が規定されているものの、その違反に対する民事上の効果については何ら規定がない。適合性原則についての法律上の実効性を確保するためには、適合性原則に違反した場合について、損害賠償義務・取消権・無効などの民事上の効果を伴わせる規定を設ける必要がある。
  • 3 以上のとおりであるから、当会は、参議院において法案の修正を含めた適切な対応を強く求めるものである。
  • 法律相談インターネット予約
  • 中小企業法律支援センター
  • 弁護士会の法律相談センター
  • 借金専門法律相談センター
  • 日弁連ひまわりお悩み110番