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「障害のある人の人権と弁護士の使命」の趣旨

高齢者・障害者の権利に関する特別委員会委員
藤岡 毅(47期)

 かつて「障害者の完全参加と平等」をテーゼとして1981年国際障害者年が展開され,国内外で障害者のおかれる状況は大きく前進した。しかし,国内に860万人以上いるといわれる障害者*1の大半は就労できず貧困状態に置かれている。
 日本の精神科病院の入院患者数は30万名あまりであり*2先進諸国と比べて異常に多く,日本の障害者の人権水準は障害のない人に比べて格段と遅れている。基本的人権を擁護し,社会正義を実現することを使命とする私たち弁護士は障害者の人権保障のため,その責務を果たしているであろうか。通常の相談者の中に障害のある人も少なくないはずであるが,その方の抱える問題の意味を弁護士が正しく理解できているかも甚だ心もとない。
 日本は2014年1月障害者権利条約(障害者の権利に関する条約・Convention on the Rights of Persons with Disabilities)を批准し,同年2月19日から,同条約は日本の国内法としても効力が生じている。
 同条約に基づき障害者基本法・障害者差別解消法等の法整備がなされつつある。全ての弁護士がこれらの条約・法令の意義を理解する必要がある。
 そのため,多くの会員がこの問題を意識し,積極的に取り組んでもらうためのヒントとして「障害のある人の人権と弁護士の使命」とのテーマで特集する次第である*3。

*1:【障害者の表記】について。本特集では現行法が障害者基本法はじめ「障害者」の表記を使っていることも考慮して「障害者」または「障害のある人」で統一した。なお,障害者の表記については,害はその人自身に害悪があるような印象を与えて偏見を助長するため不適切という指摘もある。反対に,社会にある障壁に社会参加を妨げられている被害者としての障害者(後述する障害の「社会モデル」の考え方)である以上,「障がい者」等の表記はむしろ障害者問題の本質を隠蔽するという指摘もあり,他方「障碍者」とすべきとの有力説もあるなど議論は定まっていない。

*2:平成24年11月20日厚労省医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況

*3:LIBRAでは,2014年8月号で『知的障害者・高齢者等の刑事弁護と社会復帰支援』という特集を組んでいるため,本特集ではそこで取り上げた視点(罪に問われる障害者問題,刑事弁護における障害者問題等)は割愛した。