東京弁護士会

死刑執行に抗議する会長声明

2015年12月21日

東京弁護士会 会長 伊藤 茂昭

 去る12月18日、東京拘置所及び仙台拘置所で各1名ずつ死刑が執行された。岩城光英法務大臣が就任してから初の死刑執行であり、第2次安倍内閣以降は今年6月以来8回目で、合わせて14人になる。
東京で執行されたのは、川崎アパート3人殺害事件といわれる事件で、2009年5月に発生した事件であり、検察が起訴前に精神鑑定を実施した事件である。 裁判員裁判の対象事件となり、2010年公判前手続を経て2011年6月に死刑判決を受け、弁護団は控訴を行ったが、被告人自身が控訴を取り下げて死刑判 決が確定した事件である。裁判員裁判で死刑判決を受け、死刑が執行されたのは初めてのことである。
 仙台で執行されたのは、2006年7月に発生した事件であり、裁判の途中から被告人は無罪を主張していた事件である。
 いずれの事件も、死刑を執行して問題がないのか、慎重の上にも慎重に判断されなければならない事件である。
 死刑は、かけがえのない生命を奪い、人間の存在を完全に否定するという不可逆的な刑罰である。また、罪を犯した人の更生と社会復帰の可能性を完全に奪い去るという取り返しのつかない刑罰であるという問題点を内包している。
死刑の廃止は国際的な趨勢であり、140か国以上の国が既に死刑を廃止又は停止している。死刑を存置している国は58か国あるものの、2014年に実際に 死刑を執行した国はさらに少なく、日本を含め22か国であった。いわゆる先進国グループであるOECD(経済協力開発機構)加盟国(34か国)の中で死刑 制度を存置している国は、日本・韓国・米国の3か国のみであるが、韓国は17年以上にわたって死刑の執行を停止、米国の19州は死刑を廃止しており、さら に、昨年、今年とワシントン州、ペンシルベニア州の各知事が死刑執行の停止を表明している。もはや、この3か国で死刑を国家として統一して執行しているの は日本のみである。
 さらに、記憶に新しいところでは、2014年3月、静岡地方裁判所は袴田巖氏の第二次再審請求事件について、再審を開始し、 死刑及び拘置の執行を停止する決定をした。現在、東京高等裁判所において即時抗告審が行われているが、もし死刑が執行されていたならば、まさに取り返しの つかない事態となっていた。これらは、刑事裁判における冤罪の危険性と死刑の執行による取り返しのつかない人権侵害の恐ろしさを如実に示すものである。世 論においても、かつてないほど死刑の存廃についての関心が高まっている。
 こうした状況を受け、国際人権(自由権)規約委員会は、2014年、日本政府に対し、死刑の廃止について十分に考慮すること等を勧告している。
 さらに、日本では殺人事件、強盗殺人事件等重大事件が顕著に減少しており(年間1000件位)、先進国の中でも最も安全な国の一つになっている。
 この度の死刑執行が、かかる世論や世界及び日本の情勢を踏まえて熟考の上、なされたものであったのか、あらためて問われなければならない。
 当会は、今回の死刑執行に対し強く抗議し、あわせて法務大臣に対し、死刑制度の廃止についての国民的議論の開始と死刑執行の停止に向けて誠実な対応をするよう、重ねて求めるものである。

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