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司法修習にあたり国による経済的な給付がなされなかった谷間世代の法曹に対する不公平を解消するための是正措置を求める会長声明

2023年03月28日

東京弁護士会 会長 伊井 和彦

司法を担う法曹(裁判官、検察官及び弁護士)を養成するための司法修習制度は、1947年(昭和22年)に、日本国憲法施行と同時に開始された。以来、国は、60年以上にわたって、司法修習生に対し、国家公務員に準じた給与を支給することにより、司法修習生の兼業等を禁止して司法修習に専念させる給費制を採用し、これにより法曹を養成してきた。しかし、この給費制は、「裁判所法の一部を改正する法律(平成16年12月10日法律第163号)」(以下「2004年改正裁判所法」という。)により廃止され、2011年11月以降の司法修習生については、修習専念義務を課せられながらも無給となり、生活資金等の貸与制が実施されることとなった。
当会は、給費制の廃止前から、日本弁護士連合会、当会以外の各弁護士会、「司法修習生に対する給与の支給継続を求める市民連絡会」、並びに、法科大学院生、司法修習生及び若手弁護士らによる「ビギナーズネット」等と共に、給費制の維持・復活を求める運動を精力的に展開していたところ、2017年4月19日、「裁判所法の一部を改正する法律(平成29年4月26日法律第23号)」(以下「2017年改正裁判所法」という。)が成立し、同年11月1日以降に採用された司法修習生(71期以降の司法修習生)に対し、月額13万5000円の基本給付金、月額3万5000円の住居給付金及び移転給付金を内容とする修習給付金が支給されることとなった。
しかし、この2017年改正裁判所法は、同法の施行前に採用された司法修習生には適用しないものとされたことから、2004年改正裁判所法の施行後で2017年改正裁判所法の施行前に司法修習生として採用された法曹(新65期~70期の司法修習生)には、国による経済的な給付がなされていない。この世代の法曹、いわゆる谷間世代の法曹は、全法曹約4.7万人のうち約1.1万人を占めており、法曹経験5年から10年となり、法曹の中核的な存在となっている。質の高い法曹による力強い司法を作るためには、谷間世代の法曹と他の世代の法曹との不公平を解消するための是正措置が是非とも必要である。このことは、2017年5月31日付け会長声明においても言及しているところである。
2017年改正裁判所法が施行されてから既に5年以上が経過しているが、この間、谷間世代の法曹に対する国による一律の給付の実現に向けて、多くの国会議員や公益社団法人日本医師会などから応援メッセージが寄せられている。特に、国会議員からは、本年3月21日までに、国会議員の過半数(357名)を超える371名から応援メッセージが寄せられている。
当会は、谷間世代の法曹が様々な分野の問題に対して積極的にチャレンジしていくことができる基盤を整備し、質の高い法曹による力強い司法を作るために、改めて、国に対し、谷間世代の法曹に対する不公平を解消する是正措置を講じるよう求める。

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