在留審査手数料の値上げ等に関する出入国管理及び難民認定法改定に反対すると共に慎重な審議を求める会長声明
2026年05月26日
東京弁護士会 会長 石原 修
本年3月10日、在留資格の変更許可等に係る手数料の上限額の引き上げ等の内容を含む出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という。)の改定案(以下「本法案」という。)が閣議決定された。本年4月28日には衆院本会議で与党の賛成多数で可決され、現在、参議院で審議中である。
現行の入管法では、在留資格の変更許可、在留期間の更新許可、永住許可等の手数料の上限額が1万円と定められている(入管法第67条)。本法案は、この上限額を、在留資格の変更許可及び在留期間の更新許可については10万円、永住許可については30万円に引き上げるものである。
この点、衆議院法務委員会での説明によれば、許可される在留期間が3か月以下の場合は1万円程度、5年の場合は7万円程度、永住許可については20万円程度に値上げする方針とのことである。
政府は本改定の必要性として、公正な出入国在留管理の拡充に要する費用について、在留外国人に相応の負担を求めると説明するが、このような突然かつ急激な値上げは、現在我が国で居住する外国籍者及びその家族の実情に配慮したものとは言い難く、日本社会に暮らす多くの外国籍者の生活をその根底から脅かすものである。
特に深刻なのは、当事者である外国籍者及びその家族の暮らしに与える影響である。とりわけ子どもや高齢者のいる家族世帯には大きな打撃である。例を挙げれば、「特定活動」(難民申請者用)で在留するケースが多い難民申請者は、数か月の更新の度に1万円以上の手数料を支出することになる。ただでさえ経済的困窮状況にあることの多い難民申請者にとっては、さらなる追い打ちであり、人道上の問題も孕んでいる。
衆議院法務委員会で可決された付帯決議では、手数料の改定が在留資格の変更許可等の申請に不当な影響を与えないよう配慮するとしている。しかしながら、付帯決議に法的拘束力はなく、また、「配慮」の中身も全く不透明なのであって、当事者の抱える不安を払拭するものとは到底言えない。
永住資格取消要件の緩和等、政府の主導する「外国人政策」は厳格化の一途を辿っている。これに対し当会は、日本に暮らす外国籍者の権利を尊重し、真の意味での共生社会の実現に向けた施策を実施するよう繰り返し意見を述べてきた(入管法等「改正」法の未施行部分の施行停止、入管法による人権侵害の抑止を徹底した制度運用、及び、国際的な人権基準に沿った抜本的な法制度改革を求める意見書(2024年3月7日付)、永住資格取消制度の創設に反対する会長声明(2024年5月16日付)、「国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプラン」に抗議し、差別と偏見のない多文化共生社会の実現を求める会長声明(2025年9月17日付))。外国籍者の生活への影響を顧みない本法案は、共生社会の実現をまた一歩遠ざけるものと言わざるを得ない。
なお、本法案には、短期滞在の外国人を入国前にスクリーニングする電子渡航認証制度(JESTA)の導入も盛り込まれている。しかしながら、これについても、機械的なスクリーングの結果、特定の国の出身者であることのみをもって入国を拒否されるという入国差別が生じるおそれや、難民申請者の入国が短期滞在の目的に沿わないとして拒否されかねないといった懸念の声が上がっており、拙速な導入には反対である。
本法案の対象となる当事者は選挙権がなく「声」を上げることのできない外国籍者である。であればこそ、当事者に生じる負担や影響を十分に検討した慎重な議論が不可欠である。
当会は、外国籍者に急激かつ過大な負担を与える本法案に対し強く反対すると共に、当事者の実状を踏まえた慎重な審議を求めるものである。
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