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「犯罪被害者月間」を迎えるにあたっての会長談話

2026年10月30日

東京弁護士会 会長 石原 修

11月1日から12月1日までは「犯罪被害者月間」です。

犯罪被害者及びその家族又は遺族(以下「犯罪被害者等」といいます。)は、突然の犯罪被害により、身体的・精神的な苦痛のみならず、収入の途絶や転居を余儀なくされること等による経済的困窮、過熱取材やSNSでの誹謗中傷を始めとする二次被害など、様々な困難に直面します。こうした犯罪被害者等の実情への理解を深めるため、2005年の犯罪被害者等基本計画で定められた「犯罪被害者週間」が、本年3月閣議決定の第5次犯罪被害者等基本計画によって月間へと拡大されました。

近年、犯罪被害者等支援を巡る制度は着実に前進しています。重大な犯罪の被害者等が被害直後から弁護士による継続的な支援を受けられるよう、本年1月には「犯罪被害者等支援弁護士制度」が始まりました。

都内では、犯罪被害者等支援に特化した条例の制定が進んでいます。日野市、杉並区、多摩市、国分寺市、中野区に続いて、2025年には世田谷区と豊島区、そして2026年には立川市で犯罪被害者等支援条例が制定されました。さらに現在、港区と渋谷区でも制定に向けた検討が進んでいます。自治体独自の見舞金制度の導入をはじめ、家事・介護費用の助成や配食サービス、一時保育、ごみの訪問収集など、住民に最も身近な自治体ならではの、犯罪被害者等の日常生活に寄り添った支援が各地に広がりつつあることは、大変意義深いものです。

しかしながら、犯罪被害者等が置かれている厳しい状況に鑑みれば、支援制度にはなお多くの課題が残されています。

犯罪被害者等支援弁護士制度については、対象が故意の犯罪によって死亡又は重傷の被害を受けた方やその家族・遺族、性犯罪の被害者等に限定されていることに加え、資力基準の判定に際して、原則として配偶者の資力も考慮されるなど、犯罪被害者等の置かれた実情が十分に考慮されていないとの指摘があります。また、支援を担う弁護士についても、着手金に相当するものがなく、原則として事件終結時まで弁護士報酬が支払われないことや、実際の被害者支援活動の内容や負担を考慮することなく、加害者への通知の有無などの形式的な要件によって報酬が減額される場合があることなど、改善すべき課題があります。こうした課題を放置すれば、支援を担う弁護士の確保が困難となり、ひいては犯罪被害者等が必要な支援を受けられなくなるおそれがあります。犯罪被害者等が必要な支援を確実に受けられるよう、支援対象や利用要件の見直しとともに、弁護士が持続的に支援に取り組める報酬体系の整備が望まれます。

一方、東京都内には、犯罪被害者等支援に特化した条例がいまだ制定されていない区市町村もあります。犯罪被害者等が必要な支援を受けられるかどうかが、居住する自治体によって左右されることがあってはなりません。当会が「東京都内のすべての区市町村に犯罪被害者条例を制定することを求める会長声明」 (2021年3月29日付) で求めたとおり、住む地域にかかわらずすべての犯罪被害者等が等しく必要な支援を受けられるよう、東京都内のすべての区市町村において実効性のある条例が速やかに制定されるべきです。

このほか、加害者から損害賠償を受けられない問題や、継続的な心理的ケアの確保など、国、自治体及び関係機関が一体となって取り組むべき課題は多岐にわたります。

当会は、これまでも、東京三弁護士会が共同で運営する犯罪被害者のための電話相談を実施するとともに、警視庁・検察庁と連携することにより、東京都の助成を活用した無料法律相談につなげ、刑事手続への参加支援や損害賠償請求、報道対応などの被害者弁護活動に取り組んでまいりました。また、犯罪被害者等支援に精通した弁護士を養成する研修や、区市町村への条例制定支援、法テラス・東京都・被害者支援都民センターなど各支援機関との連携を通じた支援体制の基盤強化にも努めてまいりました。当会は、今後も各支援機関等との連携を一層深め、犯罪被害者等が、居住する地域にかかわらず、被害直後から再び平穏な生活を取り戻すまでの間、途切れることなく必要な支援を受けられる社会の実現に向けて、全力を尽くします。

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