関東大震災時の朝鮮人・中国人虐殺を教訓にヘイトスピーチ・ヘイトクライムを根絶するための施策などを求める会長声明
2026年08月31日
東京弁護士会 会長 石原 修
1923(大正12)年9月1日、関東大震災が発生し、10万人を超える方が亡くなられた。震災による混乱や不安に乗じて、朝鮮人や中国人に関する流言飛語(デマ)が飛び交い、これを信じた人たちによる多くの虐殺が行われた。当会は、これらすべての被災者・犠牲者の方々に対して心から哀悼の意を表明する。
内閣府中央防災会議の調査によれば「関東大震災時には、官憲、被災者や周辺住民による殺傷行為が多数発生した。」「殺傷事件による犠牲者の正確な数は掴めないが、震災による死者数の1~数パーセントにあた」ると報告されている(「災害教訓の継承に関する専門調査会報告書1923 関東大震災【第2編】」(2009(平成21)年3月))。震災直後は流言の報道がなされたが、その後は虐殺の報道がなされており、当時の裁判所も、朝鮮人を殺害した者について多数の有罪判決を出している。また、著名人を含む無数の方々が、目撃談・体験談を残している。そして上記報告書の中で、迫害の背景には、マイノリティへの無理解と差別意識があったことが指摘されている。
日本弁護士連合会も2003(平成15)年8月25日、政府に対し、「国は関東大震災直後の朝鮮人、中国人に対する虐殺事件に関し、軍隊による虐殺の被害者、 遺族、および虚偽事実の伝達など国の行為に誘発された自警団による虐殺の被害者、遺族に対し、その責任を認めて謝罪すべきである」等と勧告している。
しかし、政府は、2017(平成29)年11月10日、関東大震災に際し、流言飛語による殺傷事件が発生し、朝鮮人が虐殺されたという事実については、政府内にそれらの事実関係を把握することのできる記録が見当たらないと答弁し、その後も同様の答弁が続いている。また、都立横網町公園で例年挙行されている朝鮮人犠牲者追悼式典に、歴代の東京都知事は追悼文を送付してきたが、現都知事は同年以降、送付を中止している。虐殺の歴史的事実を歪曲して無かったことにするなどということは決してあってはならないことである。
関東大震災における虐殺は、人種・民族差別的言動が蔓延したうえで引き起こされた大規模なヘイトクライムであり、現在の私たちも、この歴史的事実を災害発生時を含むあらゆる場面での教訓としなければならないものである。
しかるに、大震災での惨事から103年が経過した今も、ヘイトスピーチが、公道や公園など公共空間や、インターネット上に溢れ、脅迫、暴行、傷害、放火などヘイトクライムも生じており、現在も差別や暴力を恐れて生活せざるを得ない多くの人々がいる。
東京都は、2018(平成30)年に「東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例」を制定し、ヘイトスピーチの認定など一定の成果をあげているが、都内でヘイトスピーチを伴うデモや街頭宣伝は繰り返され、インターネット上のヘイトスピーチも全く止まっていない。
当会は、2020(令和2)年6月22日に「9.1関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式典のための公園占用許可につき不当な誓約書の提出を条件とすることの撤回を求める会長声明」、2023(令和5)年8月31日に「国及び東京都に対し、関東大震災100年の節目にあたり、人種差別を根絶するための施策等を求める会長声明」を発出した。
当会は、国及び東京都に対し、関東大震災時の朝鮮人や中国人らに対する虐殺の事実を直視し、上記報告書が引用している資料をはじめとする大量の資料を確認し、その資料を公開するなどして教訓化し、人種・民族差別を根絶するための施策を実施することを強く求める。
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