医療ADRについての質問
- 医療ADRについての質問一覧
- 37. 東京三弁護士会の医療ADRは、いつから始まった制度で、これまで何件くらい利用されているのですか。
- 38. どのような人があっせん人になるのですか。
- 39. あっせん人を選ぶことができるのですか。選べるとして、どのような情報が提供されるのですか。
- 40. 「患者側代理人の経験豊富な弁護士」は、患者の味方をするのですか。「医療側代理人の経験豊富な弁護士」は、医療機関の味方をするのですか。
- 41. 医療ADRを申し立てると、どのようなメリットがありますか。医療ADRでの話し合いは、患者・医療機関の二当事者間の話し合いと、どう違うのですか。
- 42. 医療ADRは、裁判所の調停や訴訟とはどのような違いがあるのですか。
- 43. あっせん人は、医療ミスの有無や損害金額について判定するのですか。
- 44. 費用は、どのくらいかかりますか。
- 45. 申立てから解決するまで、どのくらいの期間・回数がかかりますか。
- 46. 1回の期日の時間は、どのくらいですか。
- 47. 期日を決めるときに、時間や曜日を選べるのですか。
- 48. 期日では、どのように話し合いが進められるのですか?
- 49. 和解が成立する事件はどのくらいの割合ですか?
- 50. 医療ADRで解決したときには、書面は作成されるのですか?
- 51. 医療ADRでの話し合いでまとまらなかった場合は、どうなるのですか?
- 52. 医療ADRの期日で発言した内容は、どのような取扱いを受けるのですか?その後、裁判の証拠になるのでしょうか?
- 53. 申立てをしても和解成立に至らないのであれば、医療ADRは、無駄な手続ではないでしょうか?
37. 東京三弁護士会の医療ADRは、いつから始まった制度で、これまで何件くらい利用されているのですか。
医療ADRは、2007年9月に創設された制度です。創設から2011年3月末日までの3年7か月間に合計143件の申立てがなされております。
38. どのような人があっせん人になるのですか。
弁護士があっせん人となります。あっせん人の人数は、3名体制または1名体制ですが、事案によっては2名体制で対応することもあります。
3名体制のうち2名のあっせん人は(2名体制では2名とも)、医療事件の経験が豊富な弁護士として登録されている弁護士から選任されます(患者側代理人の経験豊富な弁護士、医療側代理人の経験豊富な弁護士、各1名)。
39. あっせん人を選ぶことができるのですか。選べるとして、どのような情報が提供されるのですか。
あっせん人名簿の中から、希望するあっせん人を指名することができます。名簿は、各弁護士会のホームページや事務局で閲覧することができます。詳細については、窓口でお尋ね下さい。
ただし、あっせん人を選任するときには、相手方の意見も考慮します。
40. 「患者側代理人の経験豊富な弁護士」は、患者の味方をするのですか。「医療側代理人の経験豊富な弁護士」は、医療機関の味方をするのですか。
いいえ、ちがいます。あっせん人は、医療紛争の解決に必要とされる経験や知識を活かしながら、あくまでも第三者として中立公正な立場から、当事者間における話し合いの交通整理や調整をいたします。申立人または相手方のどちらかに味方するということはありません。
41. 医療ADRを申し立てると、どのようなメリットがありますか。医療ADRでの話し合いは、患者・医療機関の二当事者間の話し合いと、どう違うのですか。
二当事者での話し合いでは、相手方の言い分について誤解したり、感情的な対立が生じたりすることにより、話し合いが難しくなる場合もあります。医療ADRでは、中立公正な第三者であるあっせん人が関与することで、スムーズな話し合いができるようになります。
42. 医療ADRは、裁判所の調停や訴訟とはどのような違いがあるのですか。
裁判所の調停では、裁判所が調停委員を選任しますが、当事者には調停委員の経歴は分からず、希望する調停委員を指名することはできません。これに対し、医療ADRでは、医療事件の経験が豊富で医療紛争の実態をよく理解している弁護士が、あっせん人として選任されます。また、あっせん人名簿の中から、希望するあっせん人を指名することもできます。
訴訟では、証拠に基づいて事実や法的責任(損害賠償請求権)の有無について審理・認定されます。これに対し、医療ADRでは、損害賠償以外の事項についても話し合うことができます。また、証拠に基づいて法的責任の有無を明確にする手続ではありませんので、証拠が十分にそろっているかどうかにかかわらず、当事者間の自主的な紛争解決を支援します。また、患者側のみならず、医療側からも申立てることができます。
なお、裁判所における手続とは異なり、医療ADRの和解契約書に執行力を付すためには、仲裁手続とする必要があります。
また、医療ADRの申立てには、時効中断の効力がありませんので、ご注意下さい。
43. あっせん人は、医療ミスの有無や損害金額について判定するのですか。
医療ADRは、医療紛争について当事者間における話し合いにより解決する手続です。あっせん人が医療ミスや損害金額について判定することはありません。
もっとも、話し合いの過程で、当事者双方から、あっせん人に解決案や意見・提案を提示するように求められるケースも少なくありません。双方からそのような求めがあったときには、あっせん人から、本ADR限りのものとして、解決案や意見・提案を示すことはあります。
44. 費用は、どのくらいかかりますか。
以下の通り、申立手数料、期日手数料、成立手数料がかかります。
・申立手数料 金11,000円(税込) 申立時に申立人が納めます。
・期日手数料 金5,500円(税込) 期日ごとに当事者双方が各5,000円を納めます。
・成立手数料 和解成立時にまたは仲裁判断時に、解決額に応じた額を納めます。当事者間の負担割合はあっせん・仲裁人が定めます。(金額は成立手数料早見表参照)
【成立手数料早見表(標準額)】
解決額 | 成立手数料(消費税込) | 解決額 | 成立手数料(消費税込) |
10万円 | 8,800円 | 500万円 | 330,000円 |
20万円 | 17,600円 | 1,000万円 | 495,000円 |
30万円 | 26,400円 | 1,500万円 | 660,000円 |
50万円 | 44,000円 | 3,000万円 | 990,000円 |
100万円 | 88,000円 | 5,000万円 | 1,210,000円 |
150万円 | 132,000円 | 1億円 | 1,595,000円 |
300万円 | 264,000円 | 2億円 | 2,145,000円 |
なお、各手数料の詳細については、各センターにお問い合わせ下さい。
45. 申立てから解決するまで、どのくらいの期間・回数がかかりますか。
事案により異なりますが、これまでの和解解決事件の統計では、平均期間5~6か月、期日回数3~4回の話し合いで解決しています。
46. 1回の期日の時間は、どのくらいですか。
事案や話し合いの進展状況にもよりますが、1回につき1~2時間位の時間を要することが多いです。
47. 期日を決めるときに、時間や曜日を選べるのですか。
原則として平日の10時から17時30分の間に期日を設けますが、どうしても都合がつかない場合には、センター窓口やあっせん人にご相談下さい。
48. 期日では、どのように話し合いが進められるのですか?
事案により異なりますが、おおむね、まず両当事者の「対話の促進とそれによる相互理解」に向けて、話し合いの交通整理をするように努めます(ステップ1)。これにより、両当事者に解決に向けた機運が生まれれば、両当事者の了解のもとに「具体的な解決に向けた合意形成のための調整」を行います(ステップ2)。
49. 和解が成立する事件はどのくらいの割合ですか?
これまでの統計では、医療ADRが開かれて話し合いがなされた事案のうち、約6割程度の割合で和解が成立しています。
50. 医療ADRで解決したときには、書面は作成されるのですか?
解決したときには、「和解契約書」という書面を作成し、申立人・相手方・あっせん人が調印します。
51. 医療ADRでの話し合いでまとまらなかった場合は、どうなるのですか?
医療ADRでの話し合いでまとまらなかった場合、その時点で手続は終了します。
52. 医療ADRの期日で発言した内容は、どのような取扱いを受けるのですか?その後、裁判の証拠になるのでしょうか?
医療ADRに出席した当事者が、受け取った資料を事後どのように利用するかについては、何ら制約はありません。各当事者の判断に委ねられていますので、裁判の証拠となる可能性はあります。
また、仲裁・紛争解決センターが、当事者からの求めにより、医療ADRを行ったことおよびその回数等に関する証明書を発行することはあります。
しかし、医療ADRで話し合いがなされた内容について、裁判所に明らかにしたり、書類や資料を引き継ぐことはありません。
53. 申立てをしても和解成立に至らないのであれば、医療ADRは、無駄な手続ではないでしょうか?
紛争解決に向けての第一歩は、申立人の意見と相手方の意見は、どこがどのように一致し、どこがどのように相違するのかを正確に理解し、紛争の論点を整理することです。医療ADRでは、当事者間における話し合いを支援する過程において、できる限り紛争の論点を整理できるように努めています。
たとえ、結果として、医療ADRでは解決がつかず、裁判を検討せざるを得ない場合であっても、申立人と相手方の双方の努力により紛争の論点を整理することは、最終的な紛争解決のためには有益なことであると、私たちは考えています。