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Part12「ひとりぼっち」
私の人生は熱くも冷たくもなかった あの人たちに出会うまでは・・・。
日 時 2005年9月17日(土)午後5時00分開演(4時30分開場)
会 場 東京都児童会館 渋谷区渋谷1-18-24 地図はコチラ
入場者 640名
主 催 東京弁護士会子どもの人権と少年法に関する特別委員会
共 催 東京都児童会館
出 演 もがれた翼ワークショップ参加の子どもたち、当会会員
照 明 木村秀信(スクラムスタッフ)
音響コーデ 余田崇徳(clover)
音響オペ 竹田 雄
Tシャツデザイン 伊藤 愛
メイク指 高村 円
ビデオ 在庫切れ 問合せ先:ブックセンター
もがれた翼Part12 第1部
舞台は2015年の日本。管理教育、エリート主義の徹底という教育改革に、教師も生徒も保護者も巻きこまれ、もう考えることをやめています。国の方針に疑問を持たずに子どもを追い立てるおと な、おとなの言うことに黙って従う子どもたち・・・その傾向は加速する一方です。その中で傷つき、絶望する人たちがいます。
このままではいけないのです。これでは人の寂しさは何も解決されないのです。果たして、私たちはこの未来を食い止めるために何をすべきでしょうか?
浅田祥子
公立高校の2年生。医者の父を持つ。学校と家庭で行きすぎた管理教育、虐待をうけて、心も体もぼろぼろだった。カリヨン子どもセンターへ入居する。
広沢桐子
祥子の友人。ミュージシャンの両親の元で自由奔放に育ってきた。仲の良い音楽教師と共に、祥子にカリヨン子どもセンターを教える。美大志望。
岡 田
カリヨン子どもセンターにて、祥子の子ども担当となる弁護士。祥子を守るために、両親と対決する。息子のカズヒデは10年後プレミアリーグへ。
福 島
元児童養護施設職員で、今はカリヨン子どもセンター「子どもの家」のホーム長。児童養護の経験を生かして、子どもの話をじっくり聞く。ふと、かつて救いきれなかった子どもたちのことを思い出す。
夕 実
ずいぶん昔に行方不明になってしまった。施設の先生だった福島を慕っていた、心優しい少女。
もがれた翼Part12 第2部
舞台はさらに20年後。「マシ」な人々の叫びもむなしく、警察の権限が強化された恐ろしい社会になっています。学校からは厄介ものあつかいをされ、家にも帰れず、同じような境遇の子どもたちと夜の街をさまよう子どもたち。彼らの足元には、さまざまな犯罪がぽっかり口をあけているのです・・・。
子どもたちが本当に必要としているものは、子どもたちと共に生きるということは、どういうことなのでしょうか。
ひかり 18才。兄と共に母子家庭で育ったが、母親との折り合いが悪い。不器用で口下手。この世の中にあるものは、皆つまらなく汚い裏側があるのだと思っている。
り え
ひかりの親友。しかし、ひかりがたかゆきからドラッグを買っていることは知らなかった。
けんすけ
ひかりの兄。数年前までは、ひかりと同じような不安定な生活を続けていたが、友人の死を受けて更生。今はまじめに働いている。
森 村
ひかりの付添人弁護士。子どもの事件の経験が少なく、まじめすぎる人柄のせいでひかりと衝突してしまいます。最近子どもが生まれたばかり。
小 池
カリヨン子どもセンター女子自立援助ホーム「夕やけ荘」職員。おちゃめなキャラクターで、子どもたちのお兄さん的存在。料理が得意。
1.もがれた翼、新たな挑戦
9月17日。もがれた翼は、その12回目の幕を開けた。観客動員数640人。二階席をも埋め尽くす観衆に、キャストの緊張は高まった。
振り返れば、今回のもがれた翼は、新たな挑戦の多い舞台となった。従来は演劇部所属の高校生に子役を依頼してきたが、今回は子役を公募制にした。そして、4ヶ月に渡ってワークショップを開催し、応募してきた子どもたちと弁護士とが一緒になって、子どもの問題について話し合い、また、歌やダンス、発声練習などの演劇の基礎を学んできた。そのため、主演希望の子どもは倍増し、こうした子どもたちみんなに活躍の場面を用意するため、ストーリーを初めて2部構成にした。
しかし、新たな試みは、リスクも高かった。キャストが大人数になったため、全員揃って練習ができる日はついに本番当日までなかった。また、子役の半数は、演劇未経験の子どもたちだった。キャストが集まらない、キャストの声が思うように出ない・・・。
スタッフは、キャストを信じつつも内心の不安を隠しきれなかった。
2.2人の「ひとりぼっち」
第1部の舞台は、2014年。教育基本法も少年法も「改正」され、憲法9条も「改正」されようとしている。高校2年生の浅田祥子は、徹底したエリート教育を追求する高校に通う中、医者になることを無理矢理に強要する両親からの圧力に耐えかね、「ガス抜き」と称してリストカットを繰り返す日々を送っていた・・・。
第2部の舞台は、2034年。社会の階層格差が広がる中、学校は子どもたちをあからさまに線引きし、警察の権限も強化された。18歳の少女青木ひかりは、学校にも家庭にも居場所を見つけられず、それでも懸命に自分の存在を確かめようとしていた・・・。
3.約束するよ。あなたは、ひとりぼっちじゃない
始まってみれば、一瞬で不安は消えた。子どもたちの必死の演技が640人の観衆を圧倒していた。子どもたちは、舞台の上で、練習中のどの場面よりも活き活きと輝いた。
祥子「・・・私はずっとひとりぼっちでした。家にいても学校にいても。ただ過ぎるだけの毎日でした。でも、自分ではじめて魂から動いたら、いろんな人が助けてくれた。一緒にいるよって言ってくれた。」
ひかり「お母さんにとっては生まなきゃよかった子どもかもしれないけど、それなりに生きてるんだよ。楽しいこともあるよ。・・・まだ、人と一緒に生きていくのがどういうことなのかちゃんと分かるまで、ケンやお母さんと家族には戻れないと思うけど、それでもいつかって思ったから。」
子どもたちの話す一言一言に、会場全体が引き込まれていた。
そして、さくらが舞い散る舞台に幕が下りた後も、拍手は鳴りやまなかった。
どうか、私たちがこの舞台から語りかけたメッセージが、640人の観衆からさらにたくさんの人に広がって、今「ひとりぼっち」の子どもたちまで届きますように。
企画に関わったすべての人たちの切なる願いのこもった「もがれた翼」は、その12回目の幕を無事に閉じたのだった。