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SOGIハラスメント(2022年1月19日号)
●はじめに
「SOGIハラスメント(SOGIハラ)」という言葉を知っていますか。
ハラスメントとは、「嫌がらせ」・「悩ます(悩まされる)こと」を意味する言葉です。
ここで、ハラスメントの典型的な類型である、セクシュアル・ハラスメント(セクハラ)やパワー・ハラスメント(パワハラ)については、みなさん耳にしたことがあると思います。また、これらのハラスメントをしてはいけないということも共通の認識となっています。
SOGIハラもこれらと同じく、他者にしてはいけないハラスメントの一種です。そこで、今回は、SOGIハラに焦点を当ててSOGIの基礎知識とあわせて解説します。
●SOGI(ソジ/ソギ)とは
SOGIとは、Sexual Orientation(性的指向) and Gender Identity(性自認)の頭文字をとった言葉です。
「性的指向」とは、恋愛や性愛の対象がどのような性に向いているかあるいは向いていないかということを示す言葉です。例えば、恋愛や性愛の対象が同性に向いていれば同性愛者、異性に向いていれば異性愛者です。その他にも様々な性的指向が存在します。
「性自認」とは、自己の性別をどのように認識しているかということです。たとえば、「自分は女性だ」という認識です。
以上から、SOGIとは、どんな性別の人を恋愛・性愛の対象とするか、自分自身をどのような性と認識しているかという属性のことを意味します。
人は、生まれた時に、医師や助産師等から、「元気な男の子ですよ」「女の子ですよ」などといわれ、その性別が判定されます。そして、この時に割り当てられた性別と性自認が一致する人もいれば、一致しない人もいます。
また、恋愛や性愛の対象が異性に向かう人もいれば、同性に向かう人もいます。さらに、誰にも向かないという人や好きになる性に限定がない人等様々な人がいます。
人数でいえば、生まれた時に割り当てられた性別と性自認は一致し、かつ、性自認を基準としたときに異性を好きになる人が多数派です。そのため、このような性の在り方が「普通」と考えられがちです。しかし、そうではありません。このような性の在り方も、異なる性の在り方も、多様な性の一つにすぎず、これらに優劣はありません。このことを理解することが、後述のSOGIハラを防止するためにとても重要です。
●SOGIハラとは
SOGIハラは、「ソジハラ」や「ソギハラ」と読まれ、性的指向や性自認に関して行われる嫌がらせ、差別的言動等のハラスメントを意味します。
具体的にどのような行為がSOGIハラにあたるかについては、パワハラ、セクハラに関する厚生労働省の指針が参考になります。
パワハラ防止指針(「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和2年厚生労働省告示第5号))によれば、下記のような行為について、許されないパワハラに該当すると解されます(一例)。
・相手の性的指向・性自認に関する侮辱的な言動を行うこと
・労働者の性的指向・性自認等について、当該労働者の了解を得ずに他の労働者に暴露すること(アウティング)
また、セクハラ防止指針(「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(平成 18 年厚生労働省告示第 615 号))においても、相手方の性的指向又は性自認にかかわらず、当該者に対する行為がセクシュアルハラスメントに当たりうる旨明記されています。
以上のように、性的指向や性自認に関する侮辱的な言動や他人の性的指向や性自認を勝手に他人に暴露することなどは、SOGIハラにあたります。また、同性・異性を問わず、性的指向や性自認に関して性的な言動をすることもSOGIハラにあたり得ることになります。もっとも、これらはあくまでもSOGIハラの一例にすぎません。
「○○さんってレズらしいよ」、「お前、ゲイかよ。気持ち悪い(笑)」
このような言葉を聞いたことはありませんか。仮に善意でも、冗談でも、このような発言は許されません。
SOGIハラは、性的指向や性自認等、性に関する最低限の知識を持ち合わせていないと無意識のうちに行ってしまう危険があります。
インターネット上の信頼できる情報や本を読むなどして、ぜひ学んでいただきたいと思います。
書籍に限っても多くの有益なものが出版されていますが、二つに絞ってご紹介します。他にも是非ご自分に合う(読みやすい)本を探してみてください。
森山至貴(2017)『LGBTを読みとく―クィア・スタディーズ入門』筑摩書房
LGBT支援法律家ネットワーク出版プロジェクト(2016)『セクシュアル・マイノリティQ&A』弘文堂
●最後に
「自分の周りには、性的マイノリティ(性的少数者・セクシュアルマイノリティ)の人はいないから、関係ない。」
このような認識は誤りです。
様々な機関・団体により性的マイノリティの人口調査が行われています。その調査結果には若干のばらつきがありますが、その人口は10%程度であるとの結果を示しているものもあります。
しかし、自身の性的指向・性自認を周囲の人々に公表している人は、多くはありません。現代社会においては、いまだ性的マイノリティの人々に対する偏見や差別意識が根付いているため、自身の性的指向や性自認を隠すことを余儀なくされている人が多く存在するのです。そのために、これらの人々の存在は見えにくくなっているのです。
まずは、「存在しない」のではなく「見えていない」だけだという認識が大切です。その上で、自分の周りにもいるはずである性的マイノリティの人を無意識のうちに傷つけてしまわないよう、正しい知識を身につけていきましょう。