東京弁護士会
性の平等に関する委員会

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国会議員の差別的発言について(2021年6月号)

先月、「性的指向および性同一性に関する国民の理解増進に関する法律」案(いわゆる「LGBT理解増進法案」)の検討に際し、一部の国会議員から、セクシュアル・マイノリティについて「生物学上、『種の保存』に背くもの」、「道徳的に認められない」、またトランスジェンダーの行動(例えば、生物学的には男性であるところ、性自認としては女性である場合に、女性用トイレの使用を要望することや、女性選手としてスポーツ競技に参加すること)に関して「不条理なこと」「ばかげたこと」との差別的発言が相次いだ旨の報道があり、全国から強い抗議の声があがっています。

昨年は、地方議会において、同性カップルは生殖に関与していないとの誤った認識から、セクシュアル・マイノリティの法的保護に関して、一般的でない生き方を特別に擁護する必要はない等の不適切な発言がありました。当委員会は、国会及び各地方議会、全政党・議員に対し、セクシュアル・マイノリティについての正しい知識を学ぶ機会を持ち、当事者の声に真摯に耳を傾けることを求め、セクシュアル・マイノリティに対する差別発言・行為が行われないよう強く求めてきました。ところが、一年経たずして、複数の国会議員による上記の差別的発言が報道されるに至ったことは、耳を疑うばかりであり、当事者の憤りや落胆はいうまでもありません。

このような差別的発言は、いずれもセクシュアル・マイノリティに関する知識不足や誤解が前提にあるものと考えられ、猛省が求められます。具体的には、「生物学上、『種の保存』に背くもの」との発言は、セクシュアル・マイノリティが生殖に関与しないとの誤った理解に基づいているものと推測されます。そもそも個人の価値を生殖と結びつけて評価する発想自体が問題ですし、セクシュアル・マイノリティの方々も、様々な形で生殖や育児に携わっているのが現実です。当委員会でも、本年3月の公開学習会において、当事者の方々をお招きして、具体的な子育ての現状をご紹介しました。

また、「道徳的に認められない」との発言は、前提として、性別が「男」と「女」の二つに限られるものではなく、二つに明確に区別できるものでないことを看過しています。しかも、「道徳」という言葉のもとに多数派の固定観念を以て少数派の存在を否定するに等しく、到底許されません。

さらに、トランスジェンダーの行動についての「不条理」「ばかげた」との発言は、性的指向や性自認が意識的に選択・変更できる趣味嗜好とは異なるものであることや、セクシュアル・マイノリティの当事者が、性的指向や性自認において、従来の典型的なあり方と異なるために、根深い差別や偏見に苦しみ、生きづらさを抱えている実態を全く理解していません。

今回の国会議員の発言は、セクシュアル・マイノリティに関する知識不足や誤解とそれに基づく差別・偏見の根深さ、深刻さという現実を改めて露呈するものとなりました。当委員会は、この現実を変えるべく、改めて国会及び各地方議会、全政党・議員に対し、セクシュアル・マイノリティについての正しい知識を学び、当事者の声に真摯に耳を傾けることを強く求め、正しい知識と十分な理解のうえで、人権擁護のための立法措置が迅速かつ適切に実現されることを強く望みます。そして、当委員会としても、今後も当事者の方と共に声を挙げ、不当な差別によりいかなる個人の尊厳も損なわれることがない社会を目指して活動を継続していく所存です。

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