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性の平等に関する委員会

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同性カップルがやがて直面する相続問題(2022年3月3日号)

同性カップルは、法律婚が認められていません。そのため、条例でパートナーシップ証明書を発行する自治体も多数ありますが、証明書では介護や相続の問題を全て解決できるというわけではありません。
例えば、近時改正された相続法で新しく規定された「配偶者居住権」は、配偶者が従前から居住していた建物に被相続人の死亡後も引き続き無償で居住することができるという権利です。これは「配偶者」と定められているので、法律婚ができない同性カップルには適用されません。
また、相続人以外の「親族」が無償で被相続人を療養看護をした場合に、相続人に対して金銭の支払いを請求できる「特別の寄与」制度も新設されましたが、これは「親族」という要件を同性パートナーは満たさないので、同性カップルのうちの一人が介護が必要となり、同居のパートナーが介護を行っても、相続が発生した時に相続人には金銭請求ができないということになります。
このように、民法の定める「配偶者」や「親族」ではない同性パートナーは相続の場面で困難に直面します。
大阪地裁令和2年3月27日判決は、約45年同居し、一緒に事務所経営も行っていた男性のカップルのうち一方が亡くなり、残された同性パートナー(原告)は相続人(被告)に葬儀の立会いも拒否され、被告に事務所の賃貸借契約も解約されて廃業を余儀なくされた事案について、被相続人が周囲や被告に原告がパートナーであることを告げていなかったことから被告はパートナーと知らなかったので故意はないとして、慰謝料等の請求を棄却し、高裁でも判断は覆りませんでした。この事件では、養子縁組をして双方の遺産を相続できるようにしようとしていた矢先に被相続人が亡くなったというものです。
同性婚が認められていない以上、周囲や親族にカミングアウトしておかなければカップルとして保護されない、あるいは、養子縁組しか方法がない、という状況では、たとえ法律で保護されなくても、カミングアウトや養子縁組をしなかった当事者の自己責任とされてしまうことを危惧します。
また、このカップルのように、長年連れ添っていても「相続なんてまだ先」と思って遺言書を用意していない同性カップルは少なくないと思われます。 高齢化が進む社会で、同性カップルも高齢化し、やがて一方に死が訪れた時、相続人と紛争になるのを避けるためにはどのようにすれば良いのでしょうか。先延ばしにしていても、いつかは正面から相続の問題に向き合わなければならない以上、考えておくのに早すぎるということはありません。
そこで、当会は一般の方が広く参加できる公開学習会「共に考えよう!高齢化社会のセクシュアル・マイノリティ~他人事ではない介護・相続問題~」を、2022年3月10日(木)18時からZoomで開催します。セクシュアル・マイノリティの相続や介護の問題につき長年取り組んでこられた専門家の先生方をお招きして、講演の他、パネルディスカッションも行います。事前申込制ですので、ぜひお申し込み下さい。 非常に有益なお話が聞ける公開学習会ですので、たくさんの方々のご参加をお待ちしております。

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