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性の平等に関する委員会

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教育現場とセクシュアル・マイノリティ(2018年4月号)

2018年も4月に入り、新年度が始まりました。新しい環境に踏み出す人も多いのではないでしょうか。今回は教育現場におけるセクシュアル・マイノリティの話題を取り上げたいと思います。

「LGBT当事者の意識調査『REACH Online 2016 for Sexual Minorities』」の調査によると、LGBT当事者全体の約6割が学校生活(小・中・高校時代)においていじめの被害経験があり、その内容としては、「ホモ・おかま・おとこおんな」などの言葉によるいじめ被害率は63.8%、服を脱がされるいじめ被害率は18.3%であったという結果が出ています。
また、「自殺総合対策大綱(2012年、2017年)」では、「自殺念慮の割合等が高いことが指摘されている性的マイノリティについて、無理解や偏見等がその背景にある社会的要因の一つであると捉えて、教職員の理解を促進する。」との記載があり、学校現場においてもこの問題は無視できないものになっています。 学校がセクシュアル・マイノリティにとって安全な場所となるためには、教職員だけでなく、生徒一人ひとりが性の多様性について理解する必要があります。

2015年4月には、教職員を促進することを目的とした教職員向けの周知資料「性同一性障害に係る児童生徒に対するきめ細やかな対応の実施等について」が公表されています。

こうした流れの中で、実際に、セクシュアル・マイノリティに配慮した取組みを行なう学校が現れ、ニュースなどでも取り上げられるようになりました。

例えば、今年4月に開校する千葉県柏市の「柏の葉中学校」では、セクシュアル・マイノリティ(主にトランスジェンダーであると考えられます。)に考慮したジェンダーレスな制服を設けたことが話題になりました。どんなセクシュアリティをもつ者であっても「自分らしく」いるために服装は一つの重要な要素であるといえます。制服の範囲内であっても、自分で選べるというのは、多様性を尊重する取組みとして評価できるのではないでしょうか。

もう1つ、筑波大学もセクシュアル・マイノリティに対する様々な取組みをしている学校として有名です。同大学は、昨年3月に名簿の性別欄をなくす等の制度面を中心にセクシュアル・マイノリティへの配慮を明記した指針を策定し、今年3月に同指針を改訂しました。その内容は多岐に渡りますが、故意や悪意によるアウティングに対してはハラスメントとして対処するとの方針を明記したり、セクシュアル・マイノリティ当事者だけでなく、その家族やカミングアウトを受けた者が相談できる窓口を設置していたりと、非常にきめ細やかです。

学校によって事情は様々であり、取組みを実施したくても限界があるかもしれません。しかし、学校内で生じるセクシュアル・マイノリティに対するからかい等の言動をその都度注意する、異性愛を前提とする発言をしない、図書館や保健室に性の多様性に関するポスターや書籍を置く等、今すぐにでも始められることがたくさんあります。そういった取組みを積み重ねることで、どの学校、教室にも必ずいるセクシュアル・マイノリティの生徒・教員にとって、学校が安心・安全な場所になっていくのではないでしょうか。そのためには、性の多様性に関する授業を行なうというのも効果的です。

東京弁護士会性の平等に関する委員会では、2014年12月に「知ろう考えよう 学校現場におけるセクシュアル・マイノリティ」を、2016年2月に「伝えたい!セクシュアル・マイノリティのこと~学校での実戦と挑戦~」と題して公開学習会を行ないました。ここで学んだことを活かし、昨年度から「性の多様性」を題材とした出張授業のプログラムを作成し、実施しています。出張授業の、「デートDV」のプログラムでも、「男らしさ・女らしさに縛られない、自分らしさを大切に」というメッセージを伝える中で、性の多様性を説明するようにしています。最近では、この性の多様性の分量を増やしてほしいというリクエストがあり、学校現場での関心の高さを実感しています。出張授業については、当委員会のホームページから詳細を見ることができるので、是非ご覧ください。

「性の多様性」を生徒に教えたいけれど、どうやって教えたらいいのか分からない・・・とお悩みの先生は、当委員会にご相談下さい。「性の多様性」に詳しい弁護士が、学校へ行って授業を行います。随時受け付けておりますので、ぜひお申込み下さい!

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